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かの日の歌【一】
かのひのうた【一】
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「沖縄文学全集 第1巻 詩Ⅰ」 国書刊行会
1991(平成3)年6月6日
初出「琉球新報」1911(明治44)年10月30日
入力者坂本真一
校正者良本典代
公開 / 更新2017-01-14 / 2016-12-09
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


南の国の黄昏れ、
空は紅き笑ひを残して静かなり。
想思樹の葉のねむたげにうなだれ、
かすかなるうめきをやする。

ああ淋しみ、心をなす、植民地の黄昏!
椰子の並木を縫ひて、
灯火は紅き花と見まがう。
その時我が耳に訪づれし悲歌の哀さよ。

     [#挿絵]

小暗き森の奥に、
時々もれくる鬱憂の月影。
木の葉は眠りより醒めて、
あやしき夜色に顫へ出す。

忽ち響く恐ろしき獣の声!
よろづのものは皆醒めはてぬ。
声かれて歯白ろき、獣と思へば、
吾はたゞ恐怖の為めに伏して在るのみ!

     [#挿絵]

白き墓たちならぶ国!
まへには荒磯の潮騒、………
絶えず訪づれ、
うしろには歓楽の歌きこえて、
また墓石を濡す、
哭泣の哀れも湧く。
こゝにして、悲しめる者相集ひ、
匂ひよき酒を椰子の実に盛り、
互に口をすぼめて飲む時の
うれしさよ!
死は遂に吾れを慰め、………
人生の極みをのぞき見る。

     [#挿絵]

小鳥は、秋の空にさ迷ふ、
吾れは、一つの悲哀をとらへ、
小さき胸に隈なく乱る。
迷ひ、悲しみ、何の益ある、
小鳥よ来れ!手に手をとりて、
花咲き笑ふ南へさらむ。



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