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中国怪奇小説集
ちゅうごくかいきしょうせつしゅう
副題08 録異記(五代)
08 ろくいき(ごだい)
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「中国怪奇小説集」 光文社文庫、光文社
1994(平成6)年4月20日
入力者tatsuki
校正者小林繁雄
公開 / 更新2003-09-21 / 2014-09-18
長さの目安約 13 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 第六の男は語る。
「わたくしの役割は五代という事になっています。昔から五代乱離といいまして、なにしろ僅か五十四年のあいだに、梁、唐、晋、漢、周と、国朝が五たびも変ったような混乱時代でありますので、文芸方面は頗る振わなかったようです。しかしまた一方には、五代乱離といえどもみな国史ありといわれていまして、皆それぞれの国史を残している位ですから、文章まったく地に墜ちたというのではありません。したがって、国史以外にも相当の著述があります。
 さてそのなかで、今夜の御注文に応じるには何がよかろうかと思案しました末に、まずこの『録異記』をえらむことにしました。作者は蜀の杜光庭であります。杜光庭は方士で、学者で、唐の末から五代に流れ込み、蜀王の昶に親任された人物です。申すまでもなく、この時代の蜀は正統ではありません、乱世に乗じて自立したものですから、三国時代の蜀と区別するために、歴史家は偽蜀などと呼んでいます。その偽蜀に仕えていたので、杜光庭の評判はあまり好くないようですが、単に作物として見る時は、この『録異記』などは五代ちゅうでも屈指の作として知られています。彼はこのほかにも『神仙感遇伝』『集仙録』などの著作があります。これから紹介いたしますのは、『録異記』八巻の一部と御承知ください」

   異蛇

 剣利門に蛇がいる。長さは三尺で、その大きいのは甕のごとく、小さいのも柱の如く、かしらは兎、からだは蛇で、うなじの下が白い。かれが人を害せんとする時は、山の上からくるくると廻転しながら落ちて来て、往来の人を噛むのである。そうして、人の腋の下を啖い破ってその穴から生血を吸う。この蛇の名を板鼻といい、常に穴のなかにひそんで、その鼻を微かにあらわしている。鳴く声は牛の吼えるようで数里の遠きにきこえ、大地も為に震動する。住民が冬期に田を焼く時、あるいは誤まって彼を焼き殺すことがあるが、他の蛇に比して脂が多いのみである。
 乾符年中のことである。神仙駅に巨きい蛇が出た。黒色で、身のたけは三十余丈、それにしたがう小蛇の太さは椽のごとく、柱のごとく、あるいは十石入り又は五石入りの甕のごときもの、およそ幾百匹、東から西へむかって隊を組んで行く。朝の辰どき(午前七時―九時)に初めてその前列を見て、夕の酉どき(午後五時―七時)にいたる頃、その全部がようやく行き尽くしたのであって、その長さ実に幾里であるか判らない。その隊列が終らんとするところに、一人の小児が紅い旗を持ち、蛇の尾の上に立って踊りつ舞いつ行き過ぎた。この年、山南の節度使の陽守亮が敗滅した。
 会稽山の下に[#挿絵]冠蛇というのが棲んでいる。かしらには雄[#挿絵]のような[#挿絵]冠があって、長さ一尺あまり、胴まわり五、六寸。これに撃たれた者はかならず死ぬのである。
 爆身蛇というのがある。灰色で、長さ一、二尺、人の路ゆく声を聞け…

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