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権三と助十
ごんざとすけじゅう
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「現代日本文學全集56 小杉天外 小栗風葉 岡本綺堂 眞山青果集」 筑摩書房
1957(昭和32)年6月15日
入力者林田清明
校正者松永正敏
公開 / 更新2004-01-10 / 2014-09-18
長さの目安約 68 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 登場人物

駕籠かき 權三
權三の女房 おかん
駕籠かき 助十
助十の弟 助八
家主 六郎兵衞
小間物屋 彦兵衞
彦兵衞のせがれ 彦三郎
左官屋 勘太郎
猿まはし 與助
願人坊主 雲哲
おなじく 願哲
石子伴作
ほかに長屋の男 女 娘 子供 捕方
 駕籠舁など

  第一幕

享保時代。大岡越前守が江戸の町奉行たりし頃。七月初旬の午後。
神田橋本町の裏長屋。壁一重を境にして、上のかたには駕籠かき權三、下の方は駕籠かき助十が住んでゐる。いづれも破れ障子のあばら屋にて、權三の家の臺所は奧にあり。助十の家の臺所は下のかたにある。權三の家の土間には一挺の辻駕籠が置いてある。二軒の下のかたに柳が一本立つてゐて、その奧に路地の入口があると知るべし。

(けふは長屋の井戸がへにて、相長屋の願人坊主、雲哲、願哲の二人も手傳ひに出てゐる體にて、いづれも權三の家の縁に腰をかけて汗をふいてゐる。助十の弟助八は廿歳前後のわか者、刺青のある男にて片肌をぬぎ、鉢卷、尻からげの跣足にて澁團扇を持つて立つてゐる。權三の女房おかん、河岸の女郎あがりにて廿六七歳、これも手拭にて頭をつゝみ、襷がけにて浴衣の褄をからげ、三人に茶を出してゐる。少しく離れて、猿まはし與助は手拭を頸にまき、浴衣の上に猿を背負ひ、おなじく尻からげの跣足にてぼんやりと立つてゐる。表には角兵衞獅子の太鼓の音きこゆ。)
雲哲 やれ、やれ、暑いことだぞ。
願哲 まさか笠をかぶつて井戸がへにも出られず、この素頭をじり/\と照りつけられては、眼がくらみさうになる。
雲哲 まつたく今日の井戸がへは焦熱地獄だ。
おかん お前さん達もあたしのやうに手拭でつつんでゐれば好いぢやありませんか。
願哲 かういふ時には女は格別、男は鉢卷でないと何うも威勢がよくないからな。
助八 はゝ、笑はせるぜ。鉢卷をしたつて、すつとこ被りをしたつて、願人坊主の相場がどう上るものか。
おかん 與助さん。おまへさんもお飮みでないかえ。(茶碗を出す。)
與助 (進みよりて丁寧に會釋する。)はい、はい。いや、これはありがたい。實はさつきから喉が渇いてひり/\してゐました。
助八 いくらおめえの商賣でも、長屋の井戸がへにえて公を背負つて出ることもあるめえぢやあねえか。
與助 それがね。(猿をみかへる。)なにしろ這奴がよく馴染んでゐるのでね。ちつとの間でもわたしの傍を離れないのですよ。
おかん 畜生でも可愛いもんだねえ。
與助 可愛いもんですよ。
助八 ぢやあ、おれも可愛がつて遣らうか。(猿のあたまを撫でる。)やい、えて公。手前も一緒に出て來ながら、親方の背中で高見の見物をきめてゐる奴があるものか。人並はづれて長え手を持つてゐるんぢやあねえか。みんなと一緒に綱をひいて、威勢好くエンヤラサアと遣つてくれ。おい、判つたか、判つたか。(猿の耳を引張れば、猿は引つかく。)え、え…

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