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番町皿屋敷
ばんちょうさらやしき
著者
文字遣い新字旧仮名
底本 「現代日本文學全集 56 小杉天外 小栗風葉 岡本綺堂 眞山青果集」 筑摩書房
1957(昭和32)年6月10日
入力者和井府清十郎
校正者小林繁雄
公開 / 更新2001-04-20 / 2014-09-17
長さの目安約 25 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 登場人物

 青山播磨
 用人 柴田十太夫
 奴 權次 權六
 青山の腰元 お菊 お仙
 澁川の後室 眞弓
 放駒四郎兵衞
 並木の長吉
 橋場の仁助
 聖天の萬藏
 田町の彌作
 ほかに若党 陸尺 茶屋の娘など

   第一場

麹町、山王下。正面はたかき石段にて、上には左右に石の駒寄せ、石灯籠などあり。桜の立木の奥に社殿遠くみゆ。石段の下には桜の大樹、これに沿うて上のかたに葭簀張の茶店あり。店さきに床几二脚をおく。明暦の初年、三月なかばの午後。

(幡隨院長兵衞の子分並木の長吉、橋場の仁助は床几に腰をかけてゐる。茶店の娘は茶を出してゐる。宮神楽の音きこゆ。)
娘 お茶一つおあがりなされませ。
長吉 桜も今が丁度盛りだね。
娘 こゝ四五日のところが見頃でござります。それに当年はいつもよりも取分けて見事に咲きました。
長吉 山王の桜といへば、おれたちが生れねえ先からの名物だ。山の手で桜と云やあ先づこゝが一番だらうな。
仁助 それだから俺達もわざ/\下町から登つて来たのだ。それで無けりやああんまり用のねえところだ。
長吉 これ、神様の前で勿体ねえことを云ふな。山王様の罰があたるぞ。
仁助 山王様だつて怖えものか。おれには観音様が附いてゐるのだ。
娘 お背中にぢやあございませんか。(笑ふ。)
仁助 やい、やい、こん畜生。ふざけたことを云やあがるな。
長吉 まあ、静かにしろ。どうせ姐さんに褒められる柄ぢやあねえや。はゝゝゝゝゝゝ。
娘 ほゝ、とんだ粗相を申しました。
(ふたりは茶をのんでゐる。石段の上より青山播磨、廿五歳、七百石の旗本。あみ笠、羽織、袴。あとより權次、權六の二人、いづれも奴にて附添ひ出づ。)
播磨 桜はよく咲いたな。
權次 まるで作り物のやうでござりまする。
權六 たなばたの赤い色紙を引裂いて、そこらへ一度に吹き付けたら、斯うもあらうかと思はれまする。
播磨 はて、むづかしいことを云ふ奴ぢや。それより一口に、祭礼の軒飾りのやうぢやと云へ。はゝゝゝゝゝ。
(三人は笑ひながら石段を降りる。)
娘 お休みなされませ。
(三人は上の方の床几にかゝる。長吉と仁助は見てさゝやき合ふ。娘は茶を汲んで三人に出す。)
長吉 おい、ねえさん。こつちへももう一杯呉んねえ。
娘 はい、はい。(茶を汲んで来る。)
長吉 (飲まうとしてわざと顔をしかめる。)こりやあ熱くつて飲めねえや。
(長吉はわざとその茶を播磨の前にぶちまける。)
權次 やあ、こいつ無礼な奴。なんで我等のまへに茶をぶちまけた。
權六 かう見たところが粗相でない。おのれ等喧嘩を売らうとするのか。
長吉 売らうが売るめえがこつちの勝手だ。買ひたくなけりや買はねえまでだ。
仁助 一文奴の出る幕ぢやあねえ、引込んでゐろ。こつちは手前達を相手にするんぢやねえや。
播磨 然らば身どもが相手と申すか。(笠を取る。)仔細…

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