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我が馬券哲学
わがばけんてつがく
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「日本の名随筆96 運」 作品社
1990(平成2)年10月25日
入力者土屋隆
校正者noriko saito
公開 / 更新2007-05-08 / 2014-09-21
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 次ぎに載せるのは、自分の馬券哲学である。数年前に書いたものだが、あまり読まれていないと思うので再録することにした。

一、馬券は尚禅機の如し、容易に悟りがたし、ただ大損をせざるを以て、念とすべし。

一、なるべく大なる配当を獲んとする穴買主義と、配当はともかく勝馬を当んとする本命主義と。

一、堅き本命を取り、不確かなる本命を避け、たしかなる穴を取る、これ名人の域なれども、容易に達しがたし。

一、穴場に三、四枚も札がかかると、もう買うのが嫌になる穴買主義者あり、これも亦馬券買いの邪道。

一、穴場の入口の開くや否や、傍目もふらず本命へ殺到する群集あり、本命主義の邪道である。他の馬が売れないのに配当金いずれにありやと訊いて見たくなる。甲馬乙馬に幾何の投票あるゆえ丙馬を買って、これを獲得せんとするこそ、馬券買の本意ならずや。

一、二十四、五円以下の配当の馬を買うほどならば、見ているに如かず、何となれば、世に絶対の本命なるものなければ也。

一、然れども、実力なき馬の穴となりしこと曾てなし。

一、甲馬乙馬実力比敵し、しかも甲馬は人気九十点乙馬は人気六十点ならば、絶対に乙を買うべし。

一、実力に人気相当する場合、実力よりも人気の上走しる場合、実力よりも人気の下走しる場合。最後の場合は絶対に買うべきである。

一、その場の人気の沸騰に囚われず、頭を冷徹に保ち、ひそかに馬の実力を考うべし。その場の人気ほど浮薄なるものなし。

一、「何々がよい」と、一人これを云えば十人これを口にする。ほんとうは、一人の人気である。しかも、それが十となり百となっている。これ競馬場の人気である。

一、「何々は脚がわるい」と云われし馬の、断然勝ちしことあり、またなるほど脚がわるかったなとうなずかせる場合あり。情報信ずべし、しかも亦信ずべからず。

一、甲馬乙馬人気比敵し、しかも実力比敵し、いずれが勝つか分らず、かかる場合は却って第三人気の大穴を狙うにしかず。

一、大穴は、おあつらえ通りには、開かないものである。天の一方に、突如として開き、ファンをあっけに取らせるものである。何々が、穴になるだろうと、多くのファンが考えている間は、絶対にならないようなものである。それは、もう穴人気と云って、人気の一種である。

一、剣を取りて立ちしが如く、常に頭を自由に保ち固定観念に囚わるること勿れ、偏愛の馬を作ること勿れ。レコードに囚わるること勿れ、融通無碍しかも確固たる信念を失うこと勿れ。馬券の奥堂に参ずるは、なお剣、棋の秘奥を修めんとするが如く至難である。

一、一日に、一鞍か二鞍堅い所を取り、他は悉く休む人あり、小乗なれども亦一つの悟道たるを失わず。大損をせざる唯一の方法である。

一、損を怖れ、本命々々と買う人あり、しかし損がそれ程恐しいなら、馬券などやらざるに如かず。

一、一日に四、五…

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