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菊模様皿山奇談
きくもようさらやまきだん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「圓朝全集 巻の九」 近代文芸・資料複刻叢書、世界文庫
1964(昭和39)年2月10日
入力者小林繁雄
校正者かとうかおり
公開 / 更新2001-01-06 / 2014-09-17
長さの目安約 382 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


 大奸は忠に似て大智は愚なるが如しと宜なり。此書は三遊亭圓朝子が演述に係る人情話を筆記せるものとは雖も、其の原を美作国久米郡南条村に有名なる皿山の故事に起して、松蔭大藏が忠に似たる大奸と遠山權六が愚なるが如き大智とを骨子とし、以て因果応報有為転変、恋と無常の世態を縷述し、読む者をして或は喜び或は怒り或は哀み或は楽ましむるの結構は実に当時の状況を耳聞目撃するが如き感ありて、圓朝子が高座に上り、扨て引続きまして今晩お聞きに入れまするは、とお客の御機嫌に供えたる作り物語りとは思われざるなり。蓋し当時某藩に起りたる御家騒動に基き、之を潤飾敷衍せしものにて、其人名等の世に知られざるは、憚る所あって故らに仮設せるに因るならん、読者以て如何とす。
  明治二十四年十一月
春濤居士識


[#改ページ]



        一

 美作国粂郡に皿山という山があります。美作や粂の皿山皿ほどの眼で見ても見のこした山、という狂歌がある。その皿山の根方に皿塚ともいい小皿山ともいう、こんもり高い処がある。その謂れを尋ねると、昔南粂郡の東山村という処に、東山作左衞門と申す郷士がありました。頗る豪家でありますが、奉公人は余り沢山使いません。此の人の先祖は東山将軍義政に事えて、東山という苗字を貰ったという旧家であります。其の家に東山公から拝領の皿が三十枚あります。今九枚残っているのが、肥後の熊本の本願寺支配の長峰山随正寺という寺の宝物になって居ります。これは彼の諸方で経済学の講釈をしたり、平天平地とかいう機械をもって天文学を説いて廻りました佐田介石和尚が確かに見たと私へ話されました。何の様な皿かと尋ねましたら、非常に良い皿で、色は紫がゝった処もあり、また赤いような生臙脂がゝった処があり、それに青貝のようにピカ/\した処もあると云いますから、交趾焼のような物かと聞きましたら、いや左様でもない、珍らしい皿で、成程一枚毀したら其の人を殺すであろうと思うほどの皿であると云いました。其の外にある二十枚の皿を白菊と云って、極薄手の物であると申すことですが、東山時分に其様な薄作の唐物はない筈、決して薄作ではあるまいと仰しゃる方もございましょうが、ちょいと触っても毀れるような薄い皿で、欠けたり割れたりして、継いだのが有るということです。此の皿には菊の模様が出ているので白菊と名づけ、あとの十枚は野菊のような色気がある処から野菊と云いました由で、此の皿は東山家伝来の重宝であるゆえ大事にするためでも有りましょう、先祖が此の皿を一枚毀す者は実子たりとも指一本を切るという遺言状をこの皿に添えて置きましたと申すことで、ちと馬鹿々々しい訳ですが、昔は其様なことが随分沢山有りましたそうでございます。其の皿は実に結構な品でありますゆえ、誰も見たがりますから、作左衞門は自慢で、件の皿を出しますのは、何ういうものか家例で…

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