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幕末維新懐古談
ばくまついしんかいこだん
副題09 甲子年の大黒のはなし
09 きのえねどしのだいこくのはなし
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「幕末維新懐古談」 岩波文庫、岩波書店
1995(平成7)年1月17日
入力者網迫、土屋隆
校正者しだひろし
公開 / 更新2006-02-26 / 2016-01-18
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)
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本文より




 話が少し元へ返って、私の十二の時が文久三年、十三が確か元治元年の甲子年であった。この甲子年はめったには来ません。六十一年目に一度という……それでその時の甲子年には、大黒の信者はもとよりのこと、そうでないものでも、商売繁昌の神のこと故、尊信するもの甚だ多くして、大黒様をその年には沢山にこしらえました。
 そして、その大黒さまを作る材であるが、それは、檜材である。日本橋の登る三枚目の板が大事にされたもの……王城の地を中心にして京を上としてある。で、登る三枚目とは室町の方から渡って三枚目の橋板を差すのである。時たま、橋の修繕の際、この橋板は皆が争って得たがったものです。私の師匠の東雲師はその甲子歳には沢山の大黒をこしらえましたが、まだ私は十三の子供、なかなかその手伝いは出来ませんでした。
 さて、翌年が慶応元年の丑、私の十四の時ですが、押し迫った師走の……あれは幾日のことであったか……浅草に大火があって、それは実に大変でありました。



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