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三つのばあい・未亡人はどう生きたらいいか
みっつのばあい・みぼうじんはどういきたらいいか
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第三十巻」 新日本出版社
1986(昭和61)年3月20日
初出「女――その世界とその問題」(「レポート」別冊)1949(昭和24)年1月1日
入力者柴田卓治
校正者土屋隆
公開 / 更新2007-12-29 / 2014-09-21
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

          一

 このお手紙をよんで、わたしもほんとに「待つ」というのはどういうことなのだろうと、お手紙に書かれているとおりの疑問を感じました。
 Hさんのお母さんの立場も、日本の女らしい哀れなものですが、そのかたの身内というものはないのでしょうか。そういう縁故があれば、A子さんが働いて義理のお姑さんの余生をすごさしてあげなくてもよいということにもなるのでしょうが――。
 A子さんが働いてその方の世話を見なければ、とかかれていますが、この働くということばは、どういう内容で云われているのかわからないので、第三者としての判断が迷わされます。もしA子さんが自分の力で経済上の負担も果してそのおとしよりを見てあげようというのならば、その条件にたって、新しい結婚は全くA子さんとY氏との間の理解で解決することだと思われます。Y氏に、前の御良人の母の生活まで保証させることはできないにしろ、A子さんがその面での経済的負担を負うなら、事情は複雑ながら結婚できないことはないし、それについて、当然の義務を果さないH家の人々が一言も批判するよりどころはないと思います。
 しかし、A子さん、A子さんの親、Y氏、それぞれが真面目にA子さんの新しい生活の立て直しについて考え、その実現をのぞむのなら、H家、A家、A子さん、Y氏みんなが集って、最も妥当な方法でH氏の母親の身の処置について協議すべきです。
 嫁だから姑の世話をしなければならない、というだけで、全責任をA子さんにおわせるとすればH家の人々の態度は間違っています。旧い親子の義理がH家の人々と後ぞいの老婦人との間にないとして、嫁であるA子さんにだけその義理を強いるのは間違いです。
 待たずに結婚するように打開されるべきです。

          二

 あなたが、お兄さんからすすめられた方に心よりも体でひかれてゆきそうであり、Eという前からよく知りあっていた従弟の方には親しすぎて良人にしようとおもえない、というところが、微妙な心理だとおもいます。
 結婚というものが、肉体の問題を根底にもっており、結婚生活の経験があり、成熟期のあなたが、ときどき会う兄の御友人に肉体からさきに譲歩しそうになっていることは、自然のようで、また自然でないと思います。
 なぜなら、その人と会うようになった動機は、結婚へ、という前提であって、そのことは結婚生活を知っているあなたに情感の上でのさまざまの思い出やまた燃えたちたい欲望を刺戟しているのですから。兄は認めている、という点も、一つの暗示です。
 いい人がらとわかっていても、知りすぎているEに対して、良人としたい気がおこらない、というのは、さきに兄の友人によって刺戟をあたえられており、その渇望がみたされていず、そのための牽かれる感情がつよいからです。
 御良人の死後Eが、あなたに対して一つも刺戟を…

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