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雨の日
あめのひ
作品ID16024
著者宮本 百合子
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第三十巻」 新日本出版社
1986(昭和61)年3月20日
入力者柴田卓治
校正者土屋隆
公開 / 更新2008-03-27 / 2014-09-21
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より




 ねばねばした水気の多い風と、横ざまに降る居ぎたない雨がちゃんぽんに、荒れ廻って居る。
 はてからはてまで、灰色な雲の閉じた空の下で、散りかかったダリアだの色のさめた紫陽花が、ざわざわ、ざわざわとゆすれて居るのを見て居ると、一人手に気が滅入って仕舞う。
 影の多い書斎で、わびしい気持で、古雑誌などを繰り返して居る私は、ほんとに何だかみじめな、すねものの様に見える。
 遠くの方から、ザザーッと、波の寄せる様な音をたてて風の渡って来るのを聞くと、秋の末の、段々寒さに向う頃の様な日和だと染々思う。
 亡くなった妹の事や、浅ましい身に落ちて行く友達が悲しく思い出された。



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