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碧玉の環飾
へきぎょくのわかざり
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「中国の怪談(一)」 河出文庫、河出書房新社
1987(昭和62)年5月6日
入力者Hiroshi_O
校正者noriko saito
公開 / 更新2004-12-04 / 2014-09-18
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 唐の代宗帝の広徳年間の事であった。孫恪という若い貧しい男があって、それが洛陽にある魏土地という処へ遊びに往った。遊びに往ったといっても、それは物見遊山のためでなく、漂白して往ったもののように思われる。ところで、この魏土地に女主人で袁を姓とする豪家があった。孫恪は別に目的もなかったが、その前を通りかかったので、ちょっとした好奇心から覗いてみると、門番も何人もいない。で、門の裡へ入ると、青い簾を垂れた小房があった。孫恪はその傍へ寄って、裡の容子を伺おうと思っていると、裡から扉を開けて若い綺麗な女が顔を出した。
 孫恪はこの女は主人の娘であろうと思ったので、あいさつしようとすると、女は驚いて引込んでしまった。孫恪は調子が悪いのでぽかんと立っていると、青い着物を着た少女が出てきて、
「何の用があって、ここへきたのか」
 と聞く。で、孫恪は、
「通りすがりに入ってきた者だ、尊門を汚して相済まん」
 と言って、みだりに門内に入った罪を謝した。
 そこで青衣の少女は裡へ入ったが、暫くすると最初の女が少女を伴れて出てきた。孫恪は少女に向って、
「この方は何人か」
 と、聞くと少女は、
「袁長官の女で、御主人である」
 と言った。
「御主人はもう結婚なされておるか」
 と、孫恪がまた問うと、
「まだ結婚はなされていない」
と、少女が応えた。
 その後で、女は少女といっしょに引込んでいったが、すぐ少女に茶菓を持たしてよこして、
「旅人の心に欲する物があれば、何によらず望みをかなえてやる」
 と言わした。既に女に恋々の情を起している孫恪は、
「我は貧しい旅人で、学も才もないのに引代え、袁氏は家が富んでいるうえに、賢であるから、とても望まれない事であるが、もし結婚する事ができれば、大慶である」
 と言って、結婚を申込むと、女は承諾して少女を媒婆にして結婚の式をあげるとともに、孫恪はそのまま女の家に居座って入婿となった。
 そのうちに四年の歳月が経った。孫恪は某時、親戚の張閑雲という者の事を思いだして、久しぶりにその家へ往った。閑雲は孫恪の顔をつくづく見て、
「お前の顔色は非常に悪い、これはきっと妖怪に魅いられている」
 と言ったが、孫恪は別にそんな心あたりもないので、
「別に怪しいと思う事もないが」
 と不審する。
「人は天地陰陽の気を受けて、魂魄を納めている、もしその陽が衰えて陰が盛んになれば、その色がたちまち表に露われるが、本人には解らない」
 と、閑雲が主張するので、孫恪は袁氏の婿になった事を話した。すると閑雲が、
「それが怪しい、速に去るがよい」
 と、言って勧めたが、孫恪は、
「しかし、袁氏は財産があるうえに賢明な女で、我のために非常に尽してくれている、その恩に対しても棄て去る事ができない」
 と言って、その言葉を用いないので、閑雲が怒って、
「邪妖の怪恩は恩とは言えな…

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