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岡の家
おかのいえ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「鈴木三重吉童話集」 岩波文庫、岩波書店
1996(平成8)年11月18日第1刷
初出「赤い鳥」1921(大正10)年12月
入力者鈴木厚司
校正者佳代子
公開 / 更新2004-03-06 / 2014-09-18
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 岡の上に百姓のお家がありました。家がびんぼうで手つだいの人をやとうことも出来ないので、小さな男の子が、お父さんと一しょにはたらいていました。男の子は、まいにち野へ出たり、こくもつ小屋の中で仕事をしたりして、いちんちじゅう休みなくはたらきました。そして、夕方になるとやっと一時間だけ、かってにあそぶ時間をもらいました。
 そのときには、男の子は、いつもきまって、もう一つうしろの岡の上へ出かけました。そこへ上ると、何十町か向うの岡の上に、金の窓のついたお家が見えました。男の子は、まいにち、そのきれいな窓を見にいきました。窓はいつも、しばらくの間きらきらと、まぶしいほど光っています。そのうちに家の人が戸をしめると見えて、きゅうに、ひょいと光がきえます。そして、もう、ただのお家とちっともかわらなくなってしまいます。男の子は、日ぐれだから金の窓もしめるのだなと思って、じぶんもお家へかえって、牛乳とパンを食べて寝るのでした。
 或日お父さんは、男の子をよんで、
「おまいはほんとによくはたらいておくれだ。そのごほうびに、きょうは一日おひまを上げるから、どこへでもいってお出で。ただ、このおやすみは、神さまが下さったのだということをわすれてはいけないよ。うかうかくらしてしまわないで、何かいいことをおぼえて来なければ。」と言いました。
 男の子はたいそうよろこびました。では、今日こそは、あの金の窓の家へいって見ようと思って、お母さまから、パンを一きれもらって、それをポケットにおしこんで出ていきました。
 男の子にはたのしい遠足でした。はだしのまま歩いていくと、往来の白いほこりの上に足のあとがつきました。うしろをふりかえって見ると、じぶんのその足あとがながくつづいています。足あとは、どこまでもじぶんに、ついて来てくれるように見えました。それから、じぶんの影法師も、じぶんのするとおりに、一しょにおどり上ったり、走ったりしてついて来ました。男の子にはそれがゆかいでたまりませんでした。
 そのうちに、だんだんにおなかがすいて来ました。男の子は道ばたのいけがきのまえを流れている、小さな川のふちにすわって、パンを食べました。そして、すきとおった、きれいな水をすくって飲みました。それから、食べあましたかたいパンの皮は、小さくくだいて、あたりへふりまいておきました。そうしておけば、小鳥が来て食べます。これはお母さんからおそわったことでした。
 男の子はふたたびどんどん歩きました。そして、ようやくのことで、たかい、まっ青な、いつも見る岡の下へつきました。男の子はその岡を上っていきますと、れいのお家がありました。しかしそばへ来て見ると、そのお家の窓はただのガラス窓で、金なぞはどこにもはまってはいませんでした。男の子はすっかりあてがはずれたので、それこそ泣き出したいくらいにがっかりしました。
 と、…

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