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文福茶がま
ぶんぶくちゃがま
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「日本の神話と十大昔話」 講談社学術文庫、講談社
1983(昭和58)年5月10日
入力者鈴木厚司
校正者大久保ゆう
公開 / 更新2003-08-25 / 2014-09-17
長さの目安約 9 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

     一

 むかし、上野国館林に、茂林寺というお寺がありました。このお寺の和尚さんはたいそうお茶の湯がすきで、いろいろとかわったお茶道具を集めてまいにち、それをいじっては楽しみにしていました。
 ある日和尚さんは用事があって町へ行った帰りに、一軒の道具屋で、気に入った形の茶がまを見つけました。和尚さんはさっそくそれを買って帰って、自分のお部屋に飾って、
「どうです、なかなかいい茶がまでしょう。」
 と、来る人ごとに見せて、じまんしていました。
 ある晩和尚さんはいつものとおりお居間に茶がまを飾ったまま、そのそばでうとうと居眠りをしていました。そのうちほんとうにぐっすり、寝込んでしまいました。
 和尚さんのお部屋があんまり静かなので、小僧さんたちは、どうしたのかと思って、そっと障子の透き間から中をのぞいてみました。すると和尚さんのそばに布団をしいて座っていた茶がまが、ひとりでにむくむくと動き出しました。「おや。」と思ううちに、茶がまからひょっこり頭が出て、太いしっぽがはえて、四本の足が出て、やがてのそのそとお部屋の中を歩き出しました。
 小僧さんたちはびっくりして、お部屋の中へとび込んで来て、
「やあ、たいへんだ。茶がまが化けた。」
「和尚さん、和尚さん。茶がまが歩き出しましたよ。」
 と、てんでんにとんきょうな声を立ててさわぎ出しました。その音に和尚さんは目をさまして、
「やかましい、何をさわぐのだ。」
 と目をこすりながらしかりました。
「でも和尚さん、ごらんなさい。ほら、あのとおり茶がまが歩きますよ。」
 こうてんでんに言うので、和尚さんも小僧さんたちの指さす方を見ますと、茶がまにはもう頭も足もしっぽもありません。ちゃんともとの茶がまになって、いつの間にか布団の上にのって、すましていました。和尚さんはおこって、
「何だ。ばかなことを言うにもほどがある。」
「でもへんだなあ。たしかに歩いていたのに。」
 こう言いながら小僧さんたちはふしぎそうに、寄って来て茶がまをたたいてみました。茶がまは「かん。」と鳴りました。
「それみろ。やっぱりただの茶がまだ。くだらないことを言って、せっかくいい心持ちに寝ているところを起こしてしまった。」
 和尚さんにひどくしかられて、小僧さんたちはしょげて、ぶつぶつ口こごとを言いながら引っ込んでいきました。
 そのあくる日和尚さんは、
「せっかく茶がまを買って来て、ながめてばかりいてもつまらない。今日はひとつ使いだめしをしてやろう。」
 と言って、茶がまに水をくみ入れました。すると小さな茶がまのくせに、いきなり手おけに一ぱいの水をがぶりと飲んでしまいました。
 和尚さんは少し「へんだ。」と思いましたが、ほかに変わったこともないので、安心してまた水を入れて、いろりにかけました。すると、しばらくしてお尻があたたまってくると、茶が…

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