えあ草紙・青空図書館 - 作品カード


広告

くらげのお使い
くらげのおつかい
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「日本の神話と十大昔話」 講談社学術文庫、講談社
1983(昭和58)年5月10日
入力者鈴木厚司
校正者大久保ゆう
公開 / 更新2003-09-02 / 2014-09-17
長さの目安約 9 ページ(500字/頁で計算)
えあ草紙で読む
HTMLページで読む

広告

find Kindle 楽天Kobo Playブックス

find Audible YouTube

本の感想を書き込もう web本棚サービスブクログ作品レビュー

青空文庫の図書カードを開く

find えあ草紙・青空図書館に戻る

楽天Koboで表紙を検索

広告

本文より

     一

 むかし、むかし、海の底に竜王とお后がりっぱな御殿をこしらえて住んでいました。海の中のおさかなというおさかなは、みんな竜王の威勢におそれてその家来になりました。
 ある時竜王のお后が、ふとしたことからたいそう重い病気になりました。いろいろに手をつくして、薬という薬をのんでみましたが、ちっとも利きめがありません。そのうちだんだんに体が弱って、今日明日も知れないようなむずかしい容体になりました。
 竜王はもう心配で心配で、たまりませんでした。そこでみんなを集めて「いったいどうしたらいいだろう。」と相談をかけました。みんなも「さあ。」と言って顔を見合わせていました。
 するとその時はるか下の方からたこの入道が八本足でにょろにょろ出てきて、おそるおそる、
「わたくしは始終陸へ出て、人間やいろいろの陸の獣たちの話も聞いておりますが、何でも猿の生き肝が、こういう時にはいちばん利きめがあるそうでございます。」
 と言いました。
「それはどこにある。」
「ここから南の方に猿が島という所がございます。そこには猿がたくさん住んでおりますから、どなたかお使いをおやりになって、猿を一ぴきおつかまえさせになれば、よろしゅうございます。」
「なるほど。」
 そこでだれをこのお使いにやろうかという相談になりました。するとたいの言うことに、
「それはくらげがよろしゅうございましょう。あれは形はみっともないやつでございますが、四つ足があって、自由に陸の上が歩けるのでございます。」
 そこでくらげが呼び出されて、お使いに行くことになりました。けれどいったいあまり気の利いたおさかなでないので、竜王から言いつけられても、どうしていいか困りきってしまいました。
 くらげはみんなをつかまえて、片っぱしから聞きはじめました。
「いったい猿というのはどんな形をしたものでしょう。」
「それはまっ赤な顔をして、まっ赤なお尻をして、よく木の上に上がっていて、たいへん栗や柿のすきなものだよ。」
「どうしたらその猿がつかまるでしょう。」
「それはうまくだますのさ。」
「どうしてだましたらいいでしょう。」
「それは何でも猿の気に入りそうなことを言って、竜王さまの御殿のりっぱで、うまいもののたくさんある話をして、猿が来たがるような話をするのさ。」
「でもどうして海の中へ猿を連れて来ましょう。」
「それはお前がおぶってやるのさ。」
「ずいぶん重いでしょうね。」
「でもしかたがない。それはがまんするさ。そこが御奉公だ。」
「へい、へい、なるほど。」
 そこでくらげは、ふわりふわり海の中に浮かんで、猿が島の方へ泳いで行きました。

     二

 やがて向こうに一つの島が見えました。くらげは「あれがきっと猿が島だな。」と思いながら、やがて島に泳ぎつきました。陸へ上がってきょろきょろ見まわしていますと、そこの…

えあ草紙で読む

ライフメディアへ登録

Koboユーザー必見!
楽天スーパーポイントとは別に
価格の5%がポイントに!

find えあ草紙・青空図書館に戻る

© 2016 Sato Kazuhiko