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鬼六
おにろく
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「日本の諸国物語」 講談社学術文庫、講談社
1983(昭和58)年4月10日
入力者鈴木厚司
校正者大久保ゆう
公開 / 更新2003-08-26 / 2014-09-17
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

     一

 ある村の真ん中に、大きな川が流れていました。その川は大へん流れが強くて速くて、昔から代々、村の人が何度橋をかけても、すぐ流されてしまいます。村の人たちも困りきって、都で名だかい大工の名人を呼んで来て、こんどこそけっして流れない、丈夫な橋をかけてもらうことにしました。
 大工はせっかく見込まれて頼まれたので、うんといって引き受けてはみたものの、いよいよその場へ来てみて、さすがの名人も、あっといって驚きました。ひっきりなし、川の水はくるくる目の回るような速さで、渦をまいて、ふくれ上がり、ものすごい音を立ててわき返っていました。
「このおそろしい流れの上に、どうして橋がかけられよう。」
 大工は、こう独り言をいいながら、ただあきれて途方にくれて、川の水をぼんやりながめていました。
 すると、どこからか、
「どうした、名人、そこで何を考えている。」
 という者がありました。
 大工が驚いて、見まわすとたん、水の上にぶく、ぶく、ぶくと大きな泡が立ったと思うと、おそろしく大きな、鬼のような顔がそこにぽっかりあらわれました。
 大工は、妙な、気味の悪いやつが出て来たと思いながら、わざとへいきで、
「うん、おれか。おれは頼まれたから、この川に橋をかけようと思って考えているのだ。」
 といいました。
 すると鬼は顔じゅう口にして、ぎえッ、ぎえッ、ぎえッと、さもおもしろそうに笑いました。そうして、大きな歯をむき出したまま、
「ふ、ふ、ふ、お前、いくら名人でも、大工にゃあこの橋はかからないぞ。」
 といいました。
「じゃあ、だれならかかる。」
「そりゃあこのおれならかかるよ。」
「じゃあ頼む、お前さん後生だ、代わりにかけておくれ。」
「そりゃあかけてやってもいいが、何をお礼にくれる。」
「そりゃあかけてくれればなんでも上げるよ。」
「じゃあお前、その目玉をよこせ。」
「なに、目玉だ。」
 大工もこれには少し驚きましたが、なにその時はその時でどうにかなるだろうと思って、
「よし、よし、お安い御用だ。」
 といって、承知してしまいました。

     二

 大工はそれなりうちへ帰って、ゆっくり一寝入りして、あくる日また、何気なしに川へ出てみました。すると、川の水は一向引いていませんが、まさかと思っていた橋が、半分以上も、みごとにその上にかかっているので、びっくりしました。
「こりゃあじょうだんじゃあないぞ。」
 大工は急にこわくなって、そっと両方の目をおさえました。
 そこでその明くる日は、朝早くから起きて、また川へ出てみますと、まあどうでしょう、じつにりっぱな橋が、何丈という高さに、水が渦巻き逆巻き流れている大川の上に、もうすっかり出来上がって、びくともしずに、長々とかかっているではありませんか。大工はこんどこそほんとうに度肝を抜かれて、ただもう目ばかりきょろき…

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