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易の占いして金取り出したること
えきのうらないしてかねとりだしたること
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「日本の名随筆82 占」 作品社
1989(平成元)年8月25日
入力者前野さん
校正者門田裕志
公開 / 更新2002-12-18 / 2014-09-17
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

「易の占いして金取り出だしたること」と題して『宇治拾遺』に出た話は、旅人が大きな荒れ家に宿を求むると、内には女一人しかないらしく、快くとめてくれた。夜あけて物食いに出掛けると、かの女が君は出で行くわけにゆかぬ、留まれ、と言った。何故と問うと、わが金を千両君に貸しあるから返したのち出でゆけ、と言った。旅人の従者どもからかい半分、きっとそうだろうとまぜ返すを、旅人は真面目に止まって占いを立て、かの女を呼び出し、汝の親は易の占いをしたかと尋ねると、何か知らねど今君がしたようなことをした、と答う。そうだろう、さて何ごとで予が千両負いおると言うかと問うに、親が死にざまに多少の物を遺し置き、十年後の某の月に旅人が宿るはず、その人はわれに千両負うた者だ、その人にその金を乞えと教えて終わった、その後親の遺した物を売り食いして過ごすに、もはや売る物も尽きたから、親が予言した月日を待っておったところ、ちょうどその日に君が泊ったから千両を求むる、と言った。旅人、金のことは真実だと言って、女を片隅につれてゆき、とあるから、また例の千両の金の代りに鉄の棒を一本ぐっと進呈などとくるところと気を廻す読者も多かろうが、そんなことにあらず、一つの柱を叩かせると中が空虚らしく響く、この内に望みの金がある、小切りに出して使いたまえと示して旅人は去った。全くこの女の父は易占の名人で、千両という大金を残らず与えて死んだら、あるに任せて若い男などにドックドックとやり続けに出してしまうは必定と判じ、十年間やっと暮らし得るだけの物を与えてこの家を失わず守らしめ、今日を待って今日泊るべき旅人を責めしめたので、この旅人も易占の名人ゆえ、千金を求められると、即座にこの家のどこにその金を蔵め隠しあるを占い知って娘に告げくれるは必定と、十年後のことを見通して父が娘に遺金したのだという。
 熊楠いわく、この話はもと支那の話を日本へ移したのだ。『太平広記』二一六に『国史補遺』を引いて、晋の隗[#挿絵]、易を善くす、臨終に妻子に告げたは、後来大いに荒るるといえども宅を売るなかれ、今より五年して、詔使の[#挿絵]氏がここへくるはず、この人われに借金あり、予が書き付けおく板を証拠として債促せよ、と言って死んだ。五年たつと、果たして[#挿絵]氏が来た。後家が亡夫の書き付けた板を示して返金を促すと、[#挿絵]は呆れたが、しばらく思索の末、蓍を取って占い、われは隗生に借金した覚えなし、隗生自分の金を隠しおき、わが易占を善くするを知って、われがここに来るを俟ってその在り処を妻子に告げしむるよう謀らい置いたのだ、その金高は五百斤で、青瓷に盛って堂屋の壁を去る一丈、地に入ること九尺の処に埋めあるはず、と教えた。よって妻がそこを掘って、果たして金を得たそうだ。
 やや似た話はインドにもあり。
『大般涅槃経』七に、「善男子よ、かくのごとし。…

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