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ペーチャの話
ペーチャのはなし
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第四巻」 新日本出版社
1979(昭和54)年9月20日
初出「少年戦旗」1931(昭和6)年9・10月合併号
入力者柴田卓治
校正者松永正敏
公開 / 更新2002-05-07 / 2014-09-17
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 ペーチャは十一だ。サヴェート同盟の百姓の息子だ。うちには牝牛が一匹、鶏が八羽、豚が四匹に、猫と犬とがいる。
 春から秋の末まで、おとっさんとおっかさんは一日、朝から晩まで畑で働いた。サヴェートでは日本でタンボをつくるように麦畑をつくる。馬鈴薯、玉ネギ、キャベツなどもつくる。
 ペーチャの親たちは、自分の畑のほかに、村の金持の百姓レスコフの畑でも働いた、つまり小作をやっていたんだ。
 ペーチャはピオニェールで、学校ではよく勉強したし、家の仕事もよく手伝った。牛をキャベツ畑から追っぱらった。草苅をした。ジャガ薯掘りなんかと来たら、うまいこと、大人にだってまけやしない!
 ところが、村にこういう噂がひろまって来た。サヴェート同盟じゃ、今度すっかり畑の作りかたを代えちまうんだそうだゾ。一軒一軒がわけて作ってる畑をみんなまぜて、一つにしちまってみんなが共通で機械で耕したり、種を蒔いたり、苅入れしたりするようにするんだそうだ。村の年よりどもはビックリして早速教会の坊さんのところへかけつけた。そして、きいた。
「ねえ坊さま。いってえ俺たちの村はどうなるだんべ。畑の区切りなくして、お前さまノペタラに麦なんどこせえたら、どっからどこまでが俺の分だか、ひとにとられたって分りもしねえ。そういう集団農場なんてのは、いやだナア」
 坊主は、プロレタリアのサヴェートがきらいだ。サヴェートになってから農民はドシドシ字がよめるようになって来た。道理がわかって来て、この世にいもしない神様を信じて、坊さんに財布ハタイて布施を出すことをだんだんしなくなって来た。だからいつだってサヴェートの敵だ。村の年よりのグチをきいてこれ幸いと、
「そうとも! そうとも!」
とおだてあげた。
「集団農場なんか下らん! プロレタリア農民にいいことなんかないんだ。反対しなさい」
 村に伝わった集団農場の噂でビックリしたものがほかにもいる。それは富農のレスコフだ。
 太って、デカイ腹に時計の鎖をたらしたレスコフは或る日ペーチャの両親をテーブルの前へよびつけて云った。
「ナア、お前たち、こんどはいよいよこの村も集団農場になりそうだが、賛成かネ?」
 ペーチャの父親はボンヤリ床を眺めて黙っていた。すると、レスコフが続けて云うには、
「集団農場になると、ワシの政府から借りてる地面も皆なの土地とつきまぜられ、従って、お前たちに働いてもらって、これまでみたいに野菜や麦や、町から貰って来た布施をやることも出来ないようになる。お互に損だ。ナア、だから、村サヴェートで大会があるときは手を上げなさんナヨ。反対するんだ! よしか?」
 そして、酒をのませ、ペーチャが学校からうちへかえって見たら、真昼間、酒くさいイビキをかいて、ペーチャのおやじは眠ってる。
 おっかさんが、手招きをしてそっとペーチャを裏の胡桃の木の下へつれ出した。レスコ…

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