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恋衣
こいごろも
作品ID2086
著者増田 雅子 / 山川 登美子 / 与謝野 晶子
文字遣い新字旧仮名
底本 「恋衣 名著復刻 詩歌文学館」 日本近代文学館
1980(昭和55)年4月1日
入力者武田秀男
校正者kazuishi
公開 / 更新2004-06-23 / 2014-09-18
長さの目安約 27 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

[#ページの左右中央に]

  詩人薄田泣菫の君に捧げまつる



[#改丁]



   絵画目次[#省略]



[#改丁]



   詩目次[#底本では各項は、「君死に給ふこと勿れ」に合わせて均等割付]

白百合

みをつくし

曙染

君死に給ふこと勿れ

恋ふるとて

いかが語らむ

皷いだけば

しら玉の

冥府のくら戸は



[#改丁]


白百合

山川登美子

髪ながき少女とうまれしろ百合に額は伏せつつ君をこそ思へ

聖壇にこのうらわかき犠を見よしばしは燭を百にもまさむ

そは夢かあらずまぼろし目をとぢて色うつくしき靄にまかれぬ

日を経なばいかにかならむこの思たまひし草もいま蕾なり

射あつべし射あてじとても矢はつがへ金の桂に額まける君

恋せじと書かせたまふか琴にしてともにと植ゑし桐のおち葉に

こがね雲ただに二人をこめて捲けなかのへだてを神もゆるさじ

手もふれぬ琴柱たふれてうらめしき音をたてわたる秋の夕かぜ

何といふところか知らず思ひ入れば君に逢ふ道うつくしきかな

このもだえ行きて夕のあら海のうしほに語りやがて帰らじ

この塚のぬしを語るな名を問ふなただすみれぐさひとむら植ゑませ

紅の花朝々つむにかずつきず待つと百日をなぐさめ居らむ

ひとすぢを千金に買ふ王もあれ七尺みどり秋のおち髪

わが息を芙蓉の風にたとへますな十三絃をひと息に切る

またの世は魔神の右手の鞭うばひ美くしき恋みながら打たむ

袖たてて掩ひたまふな罪ぞ君つひのさだめを早うけて行かむ

うつつなく消えても行かむわかき子のもだえのはての歌ききたまへ

わすれじなわすれたまはじさはいへど常のさびしき道ゆかむ身か

われゆゑに泣かせまつりぬゆるしませよわき少女にいま秋のかぜ

わが胸のみだれやすきに針もあてずましろききぬをかづきて泣きぬ

狂へりや世ぞうらめしきのろはしき髪ときさばき風にむかはむ

裾きえて蕋のまなかに立つと見ぬ天の香をもつ百合花のうへ

うるはしき神の旅路と答へまつりともづな解かむ波のまにまに

をみなへしをとこへし唯うらぶれて恨みあへるを京の秋に見し (明治三十三年の秋)

にほひもれて人のもどきのわづらはし袖におほひていだく白百合

さらば君氷にさける花の室恋なき恋をうるはしと云へ

その涙のごひやらむとのたまひしとばかりまでは語り得れども

その浜のゆふ松かぜをしのび泣く扇もつ子に秋問ひますな

狂ふ子に狂へる馬の綱あたへ狂へる人に鞭とらしめむ

薄月に君が名を呼ぶ清水かげ小百合ゆすれてしら露ちりぬ

とことはに覚むなと蝶のささやきし花野の夢のなつかしきかな

聴きたまへ神にゆづらぬやは胸にくしきひびきの我を語れる

手づくりのいちごよ君にふくませむわがさす紅の色に似たれば

里の夜を姉にも云はでねむの花君みむ道に歌むすびきぬ

紅梅にあ…

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