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五題
ごだい
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「山中貞雄作品集 全一巻」 実業之日本社
1998(平成10)年10月28日
初出「キネマ旬報」1935(昭和10)年1月1日号
入力者野村裕介
校正者伊藤時也
公開 / 更新2000-02-18 / 2014-09-17
長さの目安約 3 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 ひとが電報まで打ッて厭じゃと断るものを無理に書けと言って寄こした旬報の曰くが「左記項目のうち御気に召した題を御選びの上御執筆下さいますよう茲に懇願いたす次第」と書いて題のところに「小説の映画化戯曲の映画化私感。内外優秀脚色家。好きな脚色家。僕の一番苦しむもの。他雑感」とある。眺め渡した処「御気に召した題」が一つも見つからぬので面倒臭くなって片っ端から一瀉千里に片付けてやる決心をする。
 先ず最初の小説及び戯曲の映画化私感。小説(若しくは戯曲)の映画化に際して僕は(ひとは知ら無い。私感とあるから僕の考えを書く)その構成をシナリオの構成にする、と云う事を第一に心掛けねばならないと思う。大へんわかりきった事で恐縮ですが、僕なぞ時々此のわかりきった事を失念してとんだ恥を晒します。僕の盤嶽の一生のシナリオは原作に忠実過ぎた為に――原作の構成をその侭シナリオの構成とした為に失敗しました。そのくせ物語の中の数多くの挿話の一つ一つや、一つの挿話から他の挿話へのツナガリ等には相当注意を払ったつもりでしたが、所詮は小刀細工です。あれは、最初の水道樋の挿話を物語の最後にするか、若しくは以後のいくつかの挿話を最初の挿話の中に織り混ぜるか、するのが本当でした。
 と、気がついたのが、あの写真をツクッて半年も経った後に、しかも先輩に教えられ初めて、それと悟りました。「シナリオは先ず構成」です。わかりきった事がわかる迄に随分苦労します。
 第二は、内外優秀脚色家。
冗談言ってはいけません。斯んな事は僕達より、旬報さん、あんた方の方がよく御存じです。
 第三は好きな脚色家。
アメリカのほん屋でオリヴァ・ギャレット、グロバー・ジョンス、ヴィンセント・ローレンスあたりです。
 序にあちらでは一本のシナリオを二人が、時としては三人四人が協同で書き上げているのを屡々見受けますが、アメリカ映画のシナリオの明朗さ、洒落気、と云いますか、あの奔放自在に与太が乱れ飛ぶところは、勿論アメリカ人の国民性にも起因するでしょうが、あの数人が協同で脚色すると云う事にも、多少は原因して居るのでは無いかと思われます。
 実は先日、僕の住んで居る鳴滝村のホン屋連中が数名協同してシナリオを一本書き上げた時の事です。各人、随分得手勝手な、無責任極まる与太を飛ばしましたが、結果に於ては出来上ったシナリオが想像以上に明るく面白く、ギャグなぞも案外垢抜けのした奴がありました。
 この正月の休暇に八人会で旅をしますが、旅の間に一本書こうかとの話があります。八人の酔ッ払いがどんな与太を飛ばすだろうかと思うと今から旅が楽しみです。相当なナンセンス映画のシナリオが出来る筈です。
 第四は、僕の一番苦しむもの。
 苦しきことは余りにも多過ぎます。サイレントではタイトルを書く時の苦しみ、トーキーとなって台詞の書けぬ苦しさ。ロケーションと書け…

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