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梟の大旅行
ふくろうのだいりょこう
著者
文字遣い旧字新仮名
底本 「童話集 狐物語」 國立書院
1947(昭和22)年10月25日
入力者林幸雄
校正者鈴木厚司
公開 / 更新2005-06-05 / 2014-09-18
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 むかしあるところに、梟が住んでいました。ふかいふかい森のなかで、晝も、ほの暗いところなのです。あんまり暗い森のなかなので陽氣なお天氣の好きな、小鳥や、りすも、みんな、森のそとがわに出て住んでいました。
 梟はたった一人ぼっちで淋しいので、晝間も歌をうたって暮していました。
ぼろ着て奉公!
ぼろ着て奉公!
 梟が、ぱたぱたと羽ばたきをして、こんなうたを歌うので、森のなかの楡の木は、ほんとに淋しくなって退屈で仕方がありませんでした。
 ああ、また梟が何か云っている。どうして、あいつはあんなにいんきでじめじめした奴なんだろう。少しは、陽氣な歌でもうたってくれるといいんだのになアと、ぶつくさ云うのです。本當に森のなかはじめついていて、地びたの苔は、水氣でぐっしょり濡れていました。
 梟は、この森で生れたのではないのですけれど、もうこの森へ來て三年ばかりになります。誰も友達がなく、淋しそうに一人で暮しています。
「おい梟君、君はいったい、何が愉しみで生きているンだね?」
 と、楡の木がききました。
 梟はきょとんとした表情で、
「わたしかね?」
 と首をかしげて、猫の眼のような、金色に光った眼を暗がりの方へむけました。ぷきっぷきっと固いくちばしを鳴しながら、「そうだね。別に愉しみと云うものもないが、まア、こうして、平和でいられる事が一番ありがたいンだよ。――私はね、昔は妙な暮しをしていたのさ。いろんな世界も見て來たし、とても怖ろしい思いもして來たものさ。君は何も知らないから、自由に飛べる私を妙な奴だと思うだろうけれど、本當は、私はこれが一番しあわせなンだよ。」と云うのです。
「ほう、君は、そんな面白いところを見て來たのかね。私は足が動かないので、遠い世界をみた事はないが、梟君、おねがいだから、君の見たいろんな世界の話をしてくれないかね。」と頼みました。

 梟は身の上ばなしを始めました。
 私がはじめてものごころがついたところは、人間の住んでいる世界で、私は金色のまるい籠の中にいたのです。べっとりとしたすりえと、時々貰う肉や鷄のもつでそだてられたンですがね、いつも、籠のまわりを、とても大きいまるいものや、私に似たような生物がじいっとのぞいて私を見ているのですよ。私は不安で仕方がないので、いつも、とまり木の眞中にじいっとして暮していたンです。大きいまるい生物は人間の顏なのだそうで、この顏が私に餌をくれるのです。私に似た生物は猫と云う動物なンでね。おそろしくすばしこい奴で、人間がいなくなると、いつも、籠のそばへきてううと唸っているンです。私はこの籠の中に二年もいました。一週間目には、私はジョロで水浴をさせられる習慣なのですが、寒い日にはやりきれないと思いましたよ。しばらくして、私に餌をくれるお孃さんが亡くなってしまいました。お孃さんが亡くなってからは、餌も忘れられがちで…

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