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蛙の鳴声
かえるのなきごえ
作品ID24426
著者寺田 寅彦
文字遣い新字新仮名
底本 「寺田寅彦全集 第一巻」 岩波書店
1996(平成8)年12月5日
初出「渋柿 第五十六号附録」1918(大正7)年12月
入力者Nana ohbe
校正者松永正敏
公開 / 更新2004-04-12 / 2016-02-25
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より




 何年頃であったか忘れてしまったが、先生の千駄木時代に、晩春のある日、一緒に音楽学校の演奏会に行った帰りに、上野の森をブラブラあるいて帰った。
 その日の曲目の内に管弦楽で蛙の鳴声を真似するのがあった、それはよほど滑稽味を帯びたものであった。先生はあるきながら、その蛙の声を真似して一人で面白がってはさもくすぐったいように笑っておられた。
 それから神田の宝亭で、先生の好きな青豆のスープと小鳥のロースか何か食ってそして一、二杯の酒に顔を赤くして、例の蛙の鳴声の真似をして笑っていた。
 考えてみると、あの時分の先生と晩年の先生とは何だかだいぶちがった人のような気がするのである。
(大正七年十二月『渋柿』)



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