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少年探偵長
しょうねんたんていちょう
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「海野十三全集 第13巻 少年探偵長」 三一書房
1992(平成4)年2月29日
入力者tatsuki
校正者小林繁雄
公開 / 更新2002-01-12 / 2014-09-17
長さの目安約 225 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

   怪事件の第一ページ


 まさか、その日、この大事件の第一ページであるとは春木少年は知らなかった。あとからいろいろ思い出してみると、その日は、運命の大きな力が、春木清をぐんぐんそこへひっぱりこんだとも思われる。
 ふしぎな偶然の出来事が、ふしぎにいくつも重なって起ったような感じだが、それもみんな、清少年の運命であったにちがいないのだ。
 奇々怪々なるその大事件は、第一ページにあたるその日において、ほんのちょっぴり、その切口を見せただけであった。もし春木少年が、そのときにこの事件の大きさ、深さ、ものすごさ、おそろしさを半分ぐらいでも見とおすことができたなら、彼はこの事件に関係することをあきらめたであろう。それほどこの事件は、大じかけの恐怖事件であって、とても少年の身では歯がたたないばかりか、大危険にまきこまれることは分りきっていたのである。
 まあ、前おきのことばは、このくらいにしておいて春木少年がその事件の第一ページの上に、どういう工合にして、足を踏みこんだか、それについて語ろう。
 その日、春木少年は、この間から学校で仲よしになった同級生の牛丸平太郎という身体の大きな少年といっしょに、日曜を利用した山登りをやっていたのである。その山登りというのは、芝原水源地の奥にあるカンヌキ山の頂上まで登ることであった。
 春木少年が、この町へ来たのは、ほんの一カ月ほど前のことであった。その前、彼は東京にいた。この町は関西の港町だ。
 くわしいことは、いずれ後でのべる時があるから、ここには説明しないが、春木少年は、家の事情によって、とつぜんこの港町の伯母さんの家へあずけられたのであった。そして清は、近くの雪見中学校へ転校入学したのだった。彼は三年生だった。
 一時はずいぶんさびしい思いもしたが、清はこの頃ではすっかりなれてしまった。そして学校にも牛丸君のような愉快な友だちができるし、それから又港町のうしろにつらなっている連山の奥ふかく遊びにいく楽しみを発見して、ひまがあれば山の中を歩きまわった。
 その日、清は、牛丸の平ちゃんと連立って、おひるごろカンヌキ山の頂上にたどりついた。そこで弁当をたべ、それからそこらにある荒れ寺の境内でさんざん遊び、それから午後三時ごろになって、二人は帰途についた。
 秋の日は、六時頃にはもうとっぷり暮れるので、午後三時に頂上を出ると、麓へ出て町へはいるときは、町にも港にも灯がいっぱいついているはず、すこし山の上で遊びすぎておそくなった。
 そこで二人は、競走をして、山を下りることにした。
 カンヌキ山を下りて、芝原水源地に近くなったところに、渓流にうつくしい滝がかっているところがある。この滝の名は、イコマの滝というんだそうだ。文字はたぶん生駒の滝と書くのであろう。
 カンヌキ山から出ている下り道が二つあった。東道と西道だ。この二つの道は…

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