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金属人間
きんぞくにんげん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「海野十三全集 第12巻 超人間X号」 三一書房
1990(平成2)年8月15日
初出「サイエンス」1947(昭和22)年12月~1949(昭和24)年2月号
入力者tatsuki
校正者原田頌子
公開 / 更新2001-12-28 / 2014-09-17
長さの目安約 161 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

   こんな文章


 およそ世の中には、人にまだ知られていない、ふしぎなことがずいぶんたくさんあるのだ。
 いや、ほんとうは、今の人々に話をして、ふしぎがられる話の方が、ふしぎがられない話よりもずっとずっと多いのだ。それは九十九対一よりも、もっととびはなれた比であろうと思う。
 つまり、世の中は、ふしぎなことだらけなのだ。しかし、そう感じないのは、みなさんがたがどこにそんなふしぎなことがあるか知らないからだ。また、じっさいそのふしぎなものに行きあっていても、それがふしぎなものであることに、気がつかない場合が多い。
 それからもうひとつ――。
 人間の力では、どうにもならないことがある。それは運命ということばで、いいあらわされる。この運命というやつが、じつにふざけた先生である。運命に見こまれてしまうと、お金のない人が大金持になったり、またはその反対のことが起こったり、いや、そんなことよりも、もっともっと意外なことが起こるのだ。
 宝くじの一等があたる確からしさを、いわゆる確率の法則によって計算することができる。その法則によって出てきたところの「宝くじの一等があたる確からしさ」の率は、万人に平等である。その当せん率のあまりにも低いことを知って、万人は宝くじを買うことをやめるはずになっている。その確率の法則を作った学者や、それを信奉する後続の学究学徒の推論によれば……。
 だが、事実はそうでなくて、宝くじがさかんに売れている。それはなぜであろうか。それは、とにかく事実一等にあたって二十万円とか百万円とかの賞金をつかむ人が、毎回十人とか二十人とか、ちゃんと実在するので、自分もそのひとりになれないこともないのだと、さてこそ宝くじを買いこむのである。
 その人たちの感じでは、当せん率は、確率の法則が算定してくれる率よりも、何百倍か何千倍か、ずっと多いように感ずる。これはいったいなぜであろうか。
 一言でいうと、世の中の人々は、確率論をまもる学者よりは、ずっと正しく、運命を理解しているからだ。すなわち運命がおどけ者であるということを、わきまえているのである。とうぜんとっぴょうしもない出来事をおこさせるおどけ者の運命は、案外わたくしたちの身近に、うろうろしているのだ。奇蹟といわれるものは、案外たびたび起こるもので、わたくの感じでは、一カ月にいっぺんずつぐらいの割合で、奇蹟がおこっているのでないかと思う。
 ふしぎと運命と、そしてひんぱんに起こる奇蹟とに「世の人々よ、どうぞ気をおつけなさい」と呼びかけたい。
   一月十日
金属Qを創造する見込みのつきたる日しるす
理学博士 針目左馬太


   次の語り手


 右にかかげた日記ふうの感想文は、その署名によって明らかなとおり、針目博士がしたためたものである。
 これは博士の書斎にある書類棚の、原稿袋の中に保存せられていたも…

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