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ロシアの過去を物語る革命博物館を観る
ロシアのかこをものがたるかくめいはくぶつかんをみる
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第九巻」 新日本出版社
1980(昭和55)年9月20日
初出「戦旗」1931(昭和6)年11月7日ロシア革命記念特別号
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2002-11-24 / 2014-09-17
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 一月のある寒い日のことだ。
 革命博物館見物に出かける。モスクワでは、東京の銀座のような賑やかな通りトゥウェルスカヤ通りをずっと行って、イズヴェスチア新聞社の高い時計台、詩人プーシキンの雪を冠った銅像の見えるストラスナヤ広場を横ぎる。
 間もなく左手に広い前庭をもった黄色い大きな建物がある。小さい門から、ゾロゾロいろんな人が出入りしている。ここが革命博物館だ。
 切符を買って、外套預場へ入ると、ちょうど、モスクワ市の何処かの小学校から見学団がやって来ているところだ。男の子や女の子が、各々の班長を囲んで、かたまり合い、陽気に笑ったりしゃべったりしながら、案内者の来るのを待っている。

 革命博物館は、まとまった見学団が来た場合、いつでもちゃんとした案内者をつけて、一つ一つの室について親切な説明をしてくれる。自分達は、僅か二人だ。案内者はたのめない。同じように切符を買って入って来た、六七人の工場労働者らしい人達と一緒に、まず正面の階段を昇る。
 壁に、大きいステンカ・ラージンの絵がかかっている。すこし行くと、プガチョフの物語りを描いたこれも大きい油絵がかかっている。
 ステンカ・ラージンやプガチョフは、民謡の中にうたわれ、昔からロシアの勤労大衆に親しまれて来た農民革命家だ。彼等は、封建時代のロシアの辺土から起って、時の支配者に反抗した連中だ。が、一揆的な反抗は成功しないで捕われ、モスクワへ連れて来られた上今も赤い広場にある首切台で、処刑された。

 室が、一つ一つ進むにつれ、だんだん面白い写真がふえて来る。有名な十二月党の革命的計画についての調書の一部、処刑された数人の党員の写真、シベリアの流刑地で労役の合間に石に腰かけ、本を読んでいる人々の姿、この辺になって来ると、もう皆はさっさと室を通りすぎることは出来ない、一枚一枚の写真が、ロシアの革命の道を如実に語っている。
 一九〇五年の、全国的革命についての記録、写真は特に、強い印象を与える。見物の中には、もう年配の労働者がいて、何度も何度もその一室を廻り、感慨無量らしいのも見える。彼は、きっと一九〇五年の、記念すべき時代を自身工場の中にいて、経験したのだろう。血の日曜日に、冬宮の前で、皇帝の命令によって、射殺された数千の大衆の写真、シベリアの或る鉱山で、ゼネ・ストに参加した労働者七百人が、殺されて倒れている写真、実にヒシヒシと、プロレタリア・農民の過去の革命的努力が見る者の心にせまって来る。

 見学に来ている子供等は、説明をききながら、それらの写真を眺め、息をつめている。
 ここを見ると、帝政時代のロシアが政治犯をどんなに虐待したかが、アリアリわかる。写真を四方八方から撮って、詳細極まる人相書をこしらえているばかりではない。鉄の手枷足枷まではめたレーニンが、一八九五年にまだ大学生で政治犯としてシベリアに送られた…

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