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『文芸評論』出版について
『ぶんげいひょうろん』しゅっぱんについて
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十一巻」 新日本出版社
1980(昭和55)年1月20日
初出「文芸評論」(宮本顕治著、六芸社)の前書き、1937(昭和12)年2月号
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2003-03-25 / 2014-09-17
長さの目安約 4 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 ここに集められている宮本顕治の諸評論は、凡そ一九二九年頃から一九三二年三月頃まで、略三年間に書かれたものである。執筆された当時から今日までには僅か五年足らずの年月しか経ていないのであるが、その間には此等の諸論策の筆者自身の身辺に重畳せる波瀾を生ぜしめた左翼運動の急激な画期的な動きがあり、同時に、プロレタリア文学の現状というものも、此等の論文を書かしめた時代とは全く異った相貌に置かれている。
 今日の読者のために、極めて簡単な日本プロレタリア文学運動の歴史の推移を語るならば、大体左の如く観られるであろうと思う。
 第一期一九一七―一八年頃から同二五―二六年。
(雑誌『種蒔く人』の発刊、『文芸戦線』の誕生、日本プロレタリア文芸連盟の結成等。)
 第二期一九二六年後半から同二七年後半まで。
(アナーキストとの分離、マルクス主義的転換に関する論争激甚を極めたる時代、一面、福本主義的政治理論の文芸理論の領域における移入の時代、日本プロレタリア芸術連盟の分裂、労農芸術家連盟の結成、同連盟の分裂、前衛芸術家同盟の結成等。)
 第三期一九二八年初めから一九三二年三月頃まで。
(左翼芸術運動における理論的統一のための論争、芸術理論の質的高揚と転化、全日本無産者芸術団体協議会(ナップ)の結成、日本プロレタリア文化連盟(コップ)の結成、ナップの改組、「コップ」並びにその参加団体に加えられたる大規模の破壊。)
 第四期一九三二年後半から一九三四年三月頃まで。
(プロレタリア文化・芸術団体建直しのための努力、左翼芸術理論における一進展として社会主義的レアリズムの提唱、「コップ」並びにその参加団体の解散。)
 第五期一九三四年後半より今日に至る。
 ここに収められた諸論文は、即ち、日本プロレタリア文学運動が、当時の社会における客観的・主観的な事情によって理論的に最も高揚し、組織的にも整備せんとした第三期に属す時代において書かれたものであった。各論文は、当時の文学的動向に対して常に緊要と認められた問題にふれているばかりでなく、プロレタリア文学の若き一人の支持者として「『敗北』の文学」(一九二九年)を書き、又「過渡時代の道標」(一九三〇年)を書いた筆者自身が、かかる急速な左翼文化・文芸運動の波の裡にあって、強固な一階級人として発育して行った過程をも亦窺わせるのである。それやこれやを合わせ考えれば、この評論集はその長所においても欠点においても、今日の読者にとっては既に日本のプロレタリア文学史の上の一古典となっていると思われる。例えば、初期の左翼芸術理論に深甚なる影響を及ぼしたプレハーノフやデボーリンの理論は、一九三二年以来高められた国際的な哲学・芸術理論から検討によってその理論における一部の誤謬が認められているのであるが、筆者は既に当時それらの成果を十分摂取して、既往の評論中に認められるプ…

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