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ペンクラブのパリ大会
ペンクラブのパリたいかい
副題議題の抜粋についての感想
ぎだいのばっすいについてのかんそう
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十一巻」 新日本出版社
1980(昭和55)年1月20日
初出「文芸」1937(昭和12)年9月号
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2003-03-25 / 2014-09-17
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 六月下旬にパリで四日間に亙って開催された国際ペンクラブの第十五回大会に、有島生馬氏や井上勇氏、久米正雄氏などが出席したことが新聞に出ている。その議事日程の中、委員付託による四つの問題の検討がされている。(A)世界文学に今日のスタイルというべきものが存するか。(B)翻訳以外に如何なる方法で文化の世界化を援助すべきや、特に如何にして各国間における批評の交換を計りまた国際批評の組織をはかるべきか。(C)今日及び明日の文学における集団の発言方法及びその可能性について。(D)現代世界における詩の将来(現実社会状勢中における詩の位置。)
 どの課題も十分研究されるべき性質をもつものであるけれども、特別(B)(C)(D)とについては、散漫ながら誰の心の裡にも直ぐ湧く様々の感想があろうと云うものである。
 現実の生活環境から超絶したものの観かた、感じかたは出来ないのであるから、国際ペンクラブの大会で討論されたという(B)の一項目をしげしげと眺め入って、そこに今日の日本文化人の渇望がいかにはげしく照りかえしているかという事実、同時に実際上の困難がこれ又いかに尠くないかということを痛感するのは、ただ数人の日本ペン倶楽部代表者たちだけではないであろう。
 大会では積極的に、翻訳以外にどういう方法で、文化の世界化を援助すべきか、というところから出発している。だが周囲の現実は遙にそれ以前と云おうか、先行的な条件で制約されてしまっている。先ず、各国の文化、批評を活溌に交換するために必要な雑誌や書籍類の自由な国際的購読が今日では一般人にとって困難になって来ている。一般生活に必要がないと認められる種類の新聞や本などというものは手に入れ難く、しかもその必要でないという結論は、決して一般の読書人・文化活動者の具体的な多数決によるものではないのである。
 文学に関する国際批評の水準をたかめ、且つそれを豊富強力、進歩性に富んだものにする必要は、例えば昨今のスペイン、中国、ソヴェト、日本、ドイツ、イタリー等の文学の歴史を人類的な規模で正確に把握するために、欠くべからざる条件である。大会は、この一項だけに触れて見ても、最も文学精神の機微にふれたしかも強靭な活動の必要の自覚を各国のペンクラブに求めているわけである。
 H・G・ウエルズが一九三四年にモスク[#挿絵]を訪ねた時、むこうの作家たちにベルリン、ウィーン、ローマの各ペンクラブが、どんなにファシストの文化政策に対して「文芸の自由と品位を保持するために」たたかったかということを語っている記事を、『セルパン』の八月号で読んだ。
 そもそもペンクラブというものが、文筆にたずさわる人々の親睦機関から今日のように文化的により深い意味と活動とを行うようになったのは、ドイツでユダヤ系の作家、左翼作家を迫害して、ベルリン・ペンクラブを強奪してナチの宣伝に利用しよ…

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