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新世界の富
しんせかいのとみ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十三巻」 新日本出版社
1979(昭和54)年11月20日
初出「ソヴェト文化」創刊号、1946(昭和21)年5月
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2003-05-04 / 2014-09-17
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 第二次世界大戦では、世界のあらゆる国々が大きい犠牲を払った。地球はこの戦争によって血みどろにされた。然し全人類的なこの闘争は、これまでの歴史にあったすべての戦争と全く種類を異にしている。人間のあらゆる智慧をふりしぼって、破壊の為の武器が作られその効果が験された。けれどもこの戦争の人類の歴史に対してもっている最大の意義は野蛮な独善的な権力意慾に対して、人民の人間的理性の窮極の勝利が闘いとられたということである。世界の民主主義が、近代の仮面をかぶった封建性を打破ったということは、人類史の上での特筆大書されなければならない画期的事件である。人類の文化史はここで旧時代の一巻を終った。私達は、おさえることの出来ない歓喜と期待とをもって、明日の世界へと私達の新しい頁を切ろうとしている。
 戦争の間日本の文化が置かれていた状態は今更いうまでもなく悲惨であった。その悲惨を脱却するために役だつ国際的な文化交換というようなものは勿論遮断されていた。日本の侵略戦争が進められているあいだに、私たちはどんなに度々フランスのことを思ったろう。ポーランドのことを思ったろう。そしてソヴェト同盟の人々が献身して愛する彼等の祖国、自分たちの手で、自分たちの生命で、一九一七年から築きあげて来た人民の祖国を侵略から防衛している姿を思いやったことだろう。
 私の目の前には、ヴォルガ河が見えた。ヴォルガからスターリングラードへ入る埠頭の景色が思い出された。包囲されているときレーニングラードは、その美しい大通りと面白い数々の橋とでつい目の前に浮んできた。モスクワへ侵入軍が迫るという時、私はどんな憤りを以って侵入者の近寄る足音を想像したろう。そして、いつも想った。私がモスクワにいたころ、逢った幾人かの作家たち、ピオニェールたち、労働者たちは今日、どんな戦線にたっているであろうかと。
 一九一七年から数年の間ソヴェト同盟の到るところで、国内戦が行われていた。飢餓があった。寒さとすべての不如意があった。それにもかかわらず、新しい社会に生れ変ったソヴェトの人々は、建設の熱意に溢れて、あらゆる面に自分たちの創造力を発揮した。戦法に於て驚くべきパルチザン闘争をした労働者、農民たちは、文化の面で全く新しい文学作品を送りだした。一人一人の人が当時のソヴェト同盟に於ては新社会建設の英雄であり、自身として喜びと誇りをもって語るべき何物かを持っていたのであった。
 私が最も知りたく思ったことは一九四一年から始った祖国防衛戦の英雄的な経験と世界史的なその勝利との経験は、どんな新しいソヴェトの文学を生みだしているであろうかということであった。
 偶然ワンダ・ワシレフスカヤの「虹」を読んだ。この作品は恐らく現代文学の最も勝れた収穫の一つであろう。この作品には自分たちの生命と、ともにある自分たちのソヴェトの生活を護ろうとして、言葉…

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