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ワンダ・ワシレーフスカヤ
ワンダ・ワシレーフスカヤ
作品ID2994
著者宮本 百合子
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十三巻」 新日本出版社
1979(昭和54)年11月20日
初出「アカハタ」1948(昭和23)年7月2日号
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2003-05-18 / 2014-09-17
長さの目安約 3 ページ(500字/頁で計算)

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本文より




 ソヴェト同盟との間にとりかわされていた不可侵条約をやぶって、ナチス軍がポーランドからウクライナへ、モスクワへ、レニングラードへと侵略しはじめた一年後、一九四二年八月、ソヴェト同盟の新聞『イズヴェスチア』に「虹」という小説が連載された。作者はポーランドの婦人ワンダ・ワシレーフスカヤといって、それまでは作家としてよりむしろ政治的な活動で知られていた。彼女はモスクワに在ったポーランド解放委員会の議長であったし、ポーランド独立軍の組織者の一人でもあった。良人のコルネイチュークは、ウクライナの人で、ウクライナ共和国の外務人民委員をしたばかりでなく、ウクライナ出身の詩人、劇作家としてソヴェト同盟では一流の文学者でもある。
「虹」は、ナチスに侵略されたウクライナの農民が、手段の限りをつくした侵略軍の残虐と脅威にさらされながら、ほんとに村中がつりあげられてゆく悲劇にたえながら、人民の最後の勝利を確信し、自由と平和のために赤軍が還ってくることを信じて抵抗しつづけた一つの物語である。この長篇小説は、当時ナチスの制圧に抵抗し、奮闘していたソヴェト同盟の人々にいいつくせない同感と、歓喜とをあたえた。そして数ヵ国語に翻訳されたこの小説はナチスの残虐にさらされていたすべての国の人民に、人類の正義、発展、平和のためには、それらを破壊するファシズムを根底的にうちしりぞけ、とりのぞかなければならないことを決意させた。
 ワンダ・ワシレーフスカヤが長い間、他国の勢力に支配されて苦しみつづけたポーランドに生れ、その地方がゆたかな穀倉であるために、一九一七年の革命のときの侵入軍にも、ナチスにもねらわれ苦しめられたウクライナの民族詩人を良人にしていることは、彼女の平和と民族自立のための活動に深い必然性をあたえている。ワンダは「虹」のほかに一九三九年の夏、長篇の第一部「湿地の焔」を脱稿したが、ドイツ軍にその印刷所を占領され、やっと原稿が救われた。この作品は一九四〇年ソヴェトで発表された彼女の第一作となった。この小説にはポーランドのファシスト的支配に抗するウクライナ農民の生活が扱われた。一九四一年に第二部「湖水の星」が完成したが、それはナチス軍のソ連侵入の二月前に仕上った。原稿はそのままリヴォフ市にのこされ、リヴォフ市が赤軍に奪還されるまで四ヵ年ちかくかくされたままであった。「湖水の星」は、ナチスの侵略で旧いポーランドの権力が崩壊し、西部ウクライナが解放され、そこに新しい農地と新しい人間関係が生れいく姿が描かれた。
 ワンダ・ワシレーフスカヤは、現代の能力ある前衛婦人の一つの典型のように働いている。世界平和と民族の自立、人民の自由と文化のために彼女が必要と感じるあらゆる形で働いている。
〔一九四八年七月〕



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