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三年たった今日
さんねんたったきょう
副題日本の文化のまもり
にほんのぶんかのまもり
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十三巻」 新日本出版社
1979(昭和54)年11月20日
初出「新日本文学」1948(昭和23)年8月号
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2003-05-18 / 2014-09-17
長さの目安約 11 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 絶対主義と戦争熱で正気をうしなっていた日本の政府が無条件降伏して、ポツダム宣言を受諾したのはつい一昨昨年の夏のことであった。今日までに、まる三年たつかたたずである。その短い間に日本の民主化の道は、はっきりと三つの段階を経た。
 第一期は一九四五年八月十五日から次の年の春ごろまで。これは国の内外において、日本の民主化ということが最も正直に考えられ、実行されようとした期間であった。当時連合軍総司令部から発表された指令の一つ一つをかえりみてもそれは明瞭であるし、日本政府も、このことを好まないにかかわらず、日本の民主化は世界によって課せられた義務であると理解した。いろいろとんちんかんなことはあったにしろ、大局において日本の人民の基本的人権の確立についての土台石はこの期間におかれた。言論・出版・集会の自由、良心と身体の自由。治安維持法が廃止され、憲兵・特高制度が廃止されたということは、直接治安維持法の対象とされていた民主的な思想の人々を解放したばかりではなかった。生きのこった日本の全人民が、はじめて幾重もの口かせ、手かせからときはなされたことを意味した。ニッポン・ニュースがこの期間に製作した「君たちは話すことができる」一巻は、日本の民主化の過程に忘れることのできない記念品となった。人民の一人一人を吊りあげることも出来ると威嚇した人権蹂躪制度とその施設が無力なものとさせられてゆく姿をうつしたこのニュース映画は、素朴な描写のうちに溢れる濤のような自由への渇望を語っていた。
 そのような新しい潮におされて、まだ日本独特の民主主義の実体は不明確にしかつかまれていなかったけれども、ともかく人民が人民の幸福のために求め、たたかい建設してゆくことの当然を次第に理解しはじめてあけた一九四六年の春から一九四七年の二月ごろまでのひと区切りが、日本民主化の第二段をなしている。この時期の性格はきわめて微妙であった。日本の人民的民主化の意欲がどのように高まったかということが、大規模の大衆行動で、次から次へと示されはじめた。民主的な人民の文化運動が急速に芽立ってきて、新日本文学会の誕生したのもこの時期であった。同時に、この期間は、呆然自失していた旧権力がおのれをとり戻し、そろそろ周囲を見まわして、自分がつかまって再び立ち上る手づるは何処にあるかという実体を発見した時期でもあった。資本の利害と打算は国際的であって、ファシズムの粉砕、世界の永続的な平和確立のための努力という、世界憲章のたてまえやポツダム宣言の履行と矛盾しながら、なおかつ資本は資本と結びつき得る本質のものであり、その利害には道義をつきのけたつよい共通性が生きていることを日本の旧権力が実感した時期である。吉田首相が記者会見のとき、連合国の日本民主化方策について、はじめは危惧の念を抱かないでもなかったが、この頃は我々にも十分納得ゆくよう…

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