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洪水大陸を呑む
こうずいたいりくをのむ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「海野十三全集 第11巻 四次元漂流」 三一書房
1988(昭和63)年12月15日
初出「まひる」1947(昭和22)~1948(昭和23)年頃(掲載年月日不詳)
入力者tatsuki
校正者kazuishi
公開 / 更新2006-01-22 / 2014-09-18
長さの目安約 14 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

   ふしぎな器械

「ぼく、生きているのがいやになった」
 三四郎が、おじさんのところへ来て、こんなことをいいだした。
「生きているのがいやになったって。これはおどろいたね。子供のくせに、今からそんなことをいうようじゃ心ぼそいね。なぜそう思うんだい」
 しらが頭に、度のつよい近眼鏡をかけた学者のおじさんは、本から目をはなして、たずねた。
「だって、ちっともおもしろいことがないんだもの」
「ふん、なるほど」
「おなかはいつもすいているしね、ほしいものは店にならんでいるけれど、高くて買えやしないしね」
「ああ、そうか、そうか」
「その品物だって、とびつくほどほしいものもないし、それから大人の人は、みんな困った困ったおもしろくないおもしろくないといっているしね、ぼくは大人になるのがいやになったの」
「なかなか、いろいろ考えたもんだね。大人になるよろこびがなくなっては、もうおしまいだな。しかしだ、生きているのがいやになったなどというのは人間として卑怯だと思う。また人間というものは、もっと広い世界へ目をやり、遠い大きな仕事のことを考えなくてはならない。いや、そんなお説教をするよりも、今おじさんが三四郎君を一万年ばかり前の世界へあんないしてあげよう。そこで君は、どんな感想をもつだろうか。あとでおじさんは、君に質問するよ」
「ほんとですか。一万年も前の世界へ行くって、そんなことはできないでしょう」
「いや、それがちゃんと、できるのだ。おじさんがこしらえた器械をつかえば、そういう古い時代の有様が見えるんだ。映画のようにうつるんだ。ただ残念なことに、その時代の人々がしゃべっている声が、十分に再生できないんだ」
「じゃあ、トーキではない無声映画というのがありますね。あれみたいなものですか」
「全然無声というわけでもない。映写幕にうつる古代の人々が、ものをいうときに、口をうごかす。その口のうごかし方から、彼らがどんなことをばをしゃべっているのかを、ほんやくすることもできるのだ。しかしこのほんやくことばは、画面の上で、私たちの方へ向いていて、口をうごしかしている人にかぎるんだ。だからうしろ向きの人のいっていることばは分らない。そんなわけで、ときどき、切れ切れながら、彼のいうことばが分るんだ」
「ふしぎな器械ですね。しかしそれはおもしろいですね。しかしほんとうかしら」
「見れば、ほんとだと分るだろう」
「ああ、そうか。その器械は航時器(タイム・マシン)というあれでしょう」
「あれとは、ちがう。顕微集波器と、私は名をつけたがね。つまりこの器械は、一万年前なら一万年前の光景が、光のエネルギーとして、宇宙を遠くとんでいくのだ。そして他の星にあたると、反射してこっちへかえってくる。星はたくさんある。ちょうど一万年かかって今地球へもどってくるものもある。それをつかまえて、これから君に見せてあ…

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