えあ草紙・青空図書館 - 作品カード


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短い感想
みじかいかんそう
副題家族円卓会議について
かぞくえんたくかいぎについて
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十四巻」 新日本出版社
1979(昭和54)年7月20日
初出「婦人画報」1935(昭和10)年4月号
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2003-07-09 / 2014-09-17
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 古いころから文学に関し、或はエレン・ケイの思想紹介に関し、様々の文化的活動をされた本間さんのお家で、そのお嬢さん達が友達をも交えて、親御さんをもともに座談会をもたれたという事は、私に何か印象を与えた。本間さんのところにいつしかもうそんなに大きい娘さんがたがおられるということ、私の少女時代に暗いロマンチックな作品をよんだことのある小川未明さんが今日では二十三歳になる若い女のかたの父親であられること。それらは、私に明治時代から今日までの社会生活と文学のうつりかわりをおのずから思いおこさせたのである。
 いかにも屈託のない家庭らしい。速記録をよんで、私はいろいろの暗示をうけ面白く感じた。若い娘とその両親とが、公人としてそれぞれの立場から結婚の問題や婦人と職業の問題について睦じく公然と意見を話す時代になって来たのは、社会的に云っても、家族生活にとって一つの積極性であると思う。親と子とが、ひとの前ででも、しゃんと互を傷けずに各自の意見を表示し得るようになれば、多くの家庭を今日重く複雑にしている面倒な気心のさぐり合いが減って、楽になるだろうと考えたのであった。
 ところで、この座談会では、多くの部分が婦人と職業との問題に費されたのであるが、私は本間氏が、娘さん達が独立して何か職業を持ちたいという心持はつよいが、さて自信をもって決行するところまでは行けないでいられる心持を評して、一般的に男はその職業で一家を支えなければならないから、職業に対し熱をもっているし「遊ぶという気持がない」と云い、夫人がすぐそれについて極めて自然に「どうしても、女よりも男の方が偉くなる訳ですね」と云っていられる点に強い注意を喚び起された。
 本間氏はつづけて女が職業をもてばそれだけ男の就職線にふみこむことになるから、問題だと考えられるに対して、二十二歳の久美子さんは、さすがに今日の社会の現実は、決して男にも夫婦が食えるだけの収入を与えていないこと、既に女は経済の必要から職業を持たねばならなくなっていること、婦人労働者の低賃銀と児童搾取のことにも触れておられる。
 私が心をうごかされたのは、その久美子さんの聰い観察力をもってしても、父である本間氏と母である本間夫人との間に交わされた前述の短い会話のやりとりの間に、如何に深刻な新しい歴史の担い手の社会的内容が暗示されているかを見やぶっておられない事実である。
 本間氏夫妻は生活の必然から職業につく男は職業に忠実であり熟練し、当然の結果として遊半分職業をもっている女より偉くなると正しい結果論をしておられるのであるけれど、娘である久美子さんは、漠然とながら実際の必要から職業を求める女が増大して来ているという社会の事実をあげておられる。具体的に本間さんのところのお嬢さんたちは、目下食うために職業を求めておられないが、客観的にひろくこの世の中を見渡せば本間氏…

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