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私の感想
わたしのかんそう
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十四巻」 新日本出版社
1979(昭和54)年7月20日
初出「信濃毎日新聞」(三「代用食」)1940(昭和15)年11月18日号、「都新聞」(四「恩給と未亡人」)1935(昭和10)年5月7日号、「信濃毎日新聞」(五「女を殴る」)1940(昭和15)年11月27日号、「相模合同新聞」(七「子供と家庭」)1941(昭和16)年3月8日号
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2003-07-18 / 2014-09-17
長さの目安約 10 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

        一 婦人と科学

「日本の科学」ということがこの頃世人の注目をひいている。あらゆる文化はそれぞれの国の歴史や社会の今日おかれている条件などにつれて特徴をもっていることは当然である。したがって科学や文学にしろ、その頭に、どこそこの科学という文字をつけていわれることは自然なことであると思う。
 今日の日本は、画期的な転換の時期におかれていて、その発展のために生活のあらゆる面で科学性が重要になって来ていることは誰しも感じていることであろう。新しく科学工業の学校なんかもどしどしできる様子であるし、若い息子もその親も、未来の方針を技術家にきめれば大丈夫と思う風潮も大きく支配しているだろう。
 優秀な技術家がどっさりできることは一つのよろこびでなければならない。けれども日本の科学の真の発展向上の推進力としては科学上の技術家がふえるばかりでなく、科学の精神というものが、その純正な存在で広く一般に普及されてゆかねばなるまいと思う。婦人の常識に科学性の不足していることもとりあげられるが、たとえばごく身近な栄養の知識について、科学性は今日どんなに表現されているだろう。カロリーということがいわれて、何の総熱量は何と何との総熱量と同量であるから、これとあれとは人体に同じ作用をおよぼす、というようによく新聞などに出るけれど、科学の進歩は私たちにカロリーとともに、そのカロリーをつくるエレメント(要素)のことを教えている。ヴィタミンの発見が人類にもたらした福祉は甚大であった。今日の婦人の科学性が、せっかく到達したその発見の意義を、現実の生活で抹殺したりしてはなるまいと思うのである。

        二 家賃

 おそろしい住宅難の折から、きのうきょう厚生省と警視庁との意見にくいちがいが示されている適正家賃算出法の問題は、日本全国の借家人が注意をあつめて成行きを案じていることがらだと思う。
 日本全国の人口割にして、大都会の住民の九割は貸家に住んでいるだろう。月々の生活費の大小はまちまちでも、その経費の親玉は家賃である。昨今の始末では、全く狐に穴あれども人の子に住居なしになるかと案ぜられる折から、厚生省が適正と見る家賃のわり出しだと、これまでよりあがって畳、一畳四、五円になるというのでは不安が迫ってくる。もとは坪百円で建った家が今は二百円かかるという厚生省の意見はもっともだけれど、家というものは三年か四年すれば元金は償還すると常識では私たちに教えている。今回厚生省のきめる家賃は、一つ一つの新建家屋について何年目かには引下げを条件としてのことなのだろうか。それとも、ずっとそういう方法できまるわけなのだろうか。店子が家賃を払ってゆくのは三年か四年のことではない。借家で産湯をつかった大多数の国民は、借家から自分の葬式をも出さねばならない。みすみす大家に損をしろというようなことは…

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