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微妙な人間的交錯
びみょうなにんげんてきこうさく
副題雑誌ジャーナリズムの理想性と現実性
ざっしジャーナリズムのりそうせいとげんじつせい
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十四巻」 新日本出版社
1979(昭和54)年7月20日
初出「日本学芸新聞」1937(昭和12)年11月20日号
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2003-08-02 / 2014-09-17
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 今日の雑誌ジャーナリズムは、大ざっぱにだけ眺めわたすと満目悉く所謂事変ものの氾濫である。すべての雑誌の表紙は刺戟的なグラビア版で赤や黒のフラッシュのついた文字で彩られているようなのであるけれども、そうかといって単純にキングと文芸春秋とは全く等しい傾向をもって、戦時特輯をしているかと云えば、そうでないことは自明である。
 ここに極めて複雑である今日の雑誌ジャーナリズムの感覚とひいてはジャーナリストそのものが現代に処する文化的相貌の複雑さが反映していると思う。日本の文化、民衆の道は難航である。それがそっくりジャーナリズムに現れている。
 明治の初頭、ジャーナリストたらんとした人々、或はジャーナリズムに関係しようとした人々は、当時の日本文化の進歩に対して国際的な又進歩的な信念をもっている人々であった。社会事情がそのような自信を可能にした。
 この社会の木鐸をもって任じた雑誌ジャーナリズムは、先ず経営の方面から近代資本の力に支配されはじめ、当時から見れば二代目或は三代目の今日のジャーナリズムは、更に歴史の推進によって、資本の力と、その力を強め守ろうとする二重の力に少からず左右されなければならない事情のもとに置かれている。
 この間或る雑誌を見ていたらD・マクドナルドが、現代アメリカの最大なジャーナリストの一人であるヘンリー・ロビンソン・ルースの事業と性格、社会的行動の分析をしていた。
 周知のとおり通俗ニュース雑誌、『ライフ』『タイム』『フォーチューン』『アーキテクチュラル・フォラム』等の諸週刊雑誌のほかラジオ・ニュースの放送などで、今日三千万人のアメリカ人にタイム社の影響を与えている男である。
 去年の彼の収入は百二十万ドル程あったそうだ。このルースというアメリカ・ジャーナリズムの大立者がマクドナルドの観察にしたがうと、単純な、だが全く対立矛盾した二つの分裂した性格をもっている。
 一面情熱的な理想家、人類改善の使命の自覚者である彼が他の一方では極めて実務家で、理想の懐疑者、「原論」の嫌悪者、実利主義者である。
 理想家ルースは左翼のリーダアになったかもしれずY・M・C・Aのとび切り忠実な書記にでもなりかねないが、一面の極めてつよい実利性のために、現実においてルースは卑俗な一般的見解の水準での成功に屈伏し、金をつくり、遂に現代アメリカの支配階級の連中とは「君、僕、我々」で話す仲となった。もはや往年の貧しい牧師の息子にとって権力者たちは「彼等」ではなくなった。そしてルースはイェール大学の最も富裕な最も業々しくて反動的な「髑髏と骨」団の団員になった。
 かくて、ルースが最初出発した、「正直な報道」の与え手としてのジャーナリストの立場は非常に危険なものになって来たとマクドナルドは見ているのである。
 私は、日本のジャーナリズムにそれぞれ今日の立役者として今日活躍してい…

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