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新島繁著『社会運動思想史』書評
にいじましげるちょ『しゃかいうんどうしそうし』しょひょう
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十四巻」 新日本出版社
1979(昭和54)年7月20日
初出「唯物論研究」1937(昭和12)年12月号
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2003-08-02 / 2014-09-17
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 私たち一般人の日常生活の内外に相関連する社会的現実は、この二三年益々複雑多岐、錯綜、紛乱を極めて来ている。こういう社会の激しい矛盾の有様は、将来どうなってゆくのであろうか。今日このように巨大決裂の予感を感じさせている社会は過去にどのような歴史を辿って来ているのであろうか。そういう現実の根源の推移を司る力というものがあるなら、そして、その法則というものがあるのなら、それを知りたいという心持は、近頃の読書分子の生活欲求の中に強く作用して来ている。歴史を読みたいという人々が著しく殖えて来ているのだが、それは、とりも直さず今日の諸現象を、いくらかでも正確に、本質的に理解し得るきっかけを捕えたい望みであり、古本屋で、ベルリンでは無い古典が多く売れる事実となって現れているのである。
 三笠書房で出版されている唯物論全書の仕事も、今日の我々の周囲をとりかこむ社会の色調との対照に於て、深く評価されなければならず、同時に社会の底潮の頼もしさをも感じさせる。
 新島繁氏がこの全書の一冊として著わされた「社会運動思想史」は、今日の日本におけるこの種の本の存在の意味と、それを読もうとする人々の人間的な知性の活溌さというものに、実に愛を傾けて書かれていると感じた。著者はこの三百二十余頁の小冊子の中に、人間の能動的意志としての歴史を科学的に叙述しようと努力しているばかりでなく、それを「新しいヒューマニズムの観点からの叙述」とし、読者の知識慾に答えると共に人類の営々たる進歩のための努力、献身への共感を呼びさまそうとしているのである。
 全書の他の本と比べる機会は持っていないのであるが、恐らくこの「社会運動思想史」ぐらい、著者の胸の鼓動がありのままにつたわっている解説書は類がすくないのではないだろうか。その長所と欠点とにおいて、著者は全く自己の真心を披瀝しており、読者の人間性の皮膚にじかにふれんとする情熱を示している。その意味で、解説的、入門的な本の書きかたにおける新たな親しみ深さ、人柄の流露のタイプを提出していると思う。
 序文によると、著者は初め、今私達の目前にあるのとは異ったプランで、この本の準備をされたらしい。現在の主篇を第一篇西洋として、第二篇に東洋の歴史をとりあげ、第三篇には婦人の解放史をとりあげられるつもりであったらしい。ところが、この本では枚数とそのほかの理由で、社会思想前史ともいうべき内容にとどめられた。東洋、婦人の部分は著者によってふれられ得なかったのである。
 この種の本の読者として、私は謂わば最も初歩者の一人である。それ故、引用されている多くの古典についても批評を加える力は持っていないが、著者が忠実にその出典を明らかにしている態度には、親切さを感じた。
 古代奴隷社会を説きつつ、この著者が、昨今日本の反動的な一部の文芸家によって極めて悪質に利用されている「経済学批…

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