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人造人間の秘密
じんぞうにんげんのひみつ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「海野十三全集 第7巻 地球要塞」 三一書房
1990(平成2)年4月30日
初出「小学六年生」1940(昭和15)年8月号
入力者tatsuki
校正者kazuishi
公開 / 更新2006-07-26 / 2014-09-18
長さの目安約 39 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

   ドイツ軍襲来

「おい、起きろ。ドイツ軍だ!」
 隣室のハンスのこえである。部屋の扉は、いまにも叩き割られそうである。
 私は、自分でも、なんだかわけのわからない奇声を発して、とび起きた。
 扉は、めりめりと、こわれはじめた。
「もしもし、今、扉を叩きこわしていられるのは、ドイツ軍のお方ですか」
 私は、いそいでズボンをはきながら、入口の方へ、こえをかけた。
「おどけたことをいうな。この際に、ひとをからかうもんじゃない」
 ハンスは、扉をこわすのをやめて、裂け目の向こうで、ふうふう一と息をついている。夜光時計をみると、ちょうど午前三時であった。
「おい、ハンス。これから、どうするつもりか」
「すぐフランス国境へ逃げださないと、もう間にあわないぞ、手取り早く、用意をしろ。――おい、早くここをあけないか」
「なんだ。あんなに大きな音をたてながら、まだ扉はあいてないのか」
「よけいなことは、一口もいうな」
 ハンスは怒っている。
 私は、ちゃんと服を着てしまったので、扉の鍵に手をかけた。
 とたんに、それがきっかけでもあるかのように、戸外で、だだだだだン、だだだだンと、はげしい銃声がきこえた。
「あっ、機関銃の音だ! さては、市街戦が始まったんだな」
 鍵をまわすのと、ハンスが室内へころげこんでくるのと、同時だった。
「今のを聞いたか。ドイツの落下傘部隊だ!」
「えっ、そんなものが、やってきたか」
 私は、ドイツ軍の大胆さと徹底ぶりとから、大きな感動をうけた。
「おい、千吉。早くしろ、早くしろ。例のものを、持ち出すんだ」
「例のもの?」
「ほら、例のものだ。モール博士から預けられた例の密封した二本の黒い筒を持ちだすのだ」
「うん、あれか。あんなものを持って逃げなければならないか」
「もちろんだ。われわれ二人の門下生は、特に博士から頼まれてるのだ。博士の信頼をうら切ってはならない」
 モール博士というのは、このベルギー国のモール科学研究所の所長で、私もハンスも、この門下生だった。博士は、ちょうどドイツ軍がオランダに侵入したことが放送された直後、われわれ二人をよんで、その二つの黒い筒を預けたのだった。
 ――非常の際には、君たちは、何をおいても、これを一本ずつ背負って逃げてくれ。そして世界大戦が鎮まって、わしが再び世にあらわれるまでは、それを各自が、ちゃんと保管していてくれ。もちろん、その密封を破ることはならない。もし、万一この筒を捨てなければならないときが来たら、底のところから出ている導火線に火をつけるんだ。だが、いよいよもういけないというときでなければ、火をつけてはならない。わかったね。――
 モール博士は、長さ三十センチほどの、なんの印もついていない黒い筒を二本、二人の前に並べたのであった。
 ――博士、一体この筒の中には、なにが入っているのですか。いや、…

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