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幸福について
こうふくについて
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十五巻」 新日本出版社
1980(昭和55)年5月20日
初出「婦人画報」1946(昭和21)年5月号
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2003-09-14 / 2014-09-18
長さの目安約 19 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 私たちが日頃、一番求めているのは、何かといえば、それは幸福であるとおもうのです。
 あなた方は、みんなお若い方たちでいらっしゃるし、毎日生きていらっしゃる限り希望というものを、どこかに追求していらっしゃる。家庭で食べもののこまかいことをいう時もございましょうけれども究極するところは、やっぱり幸福に生きて、幸福に働いて、そして一生を終りたいというお気持だろうとおもいます。私などもそういう気持は非常に一貫してもっているのであります。
 人間というものが、昔から、その幸福を求め、どんなにして生きて来たかということをおはなしして、それから今日私どもが幸福に生きるために、明日幸福に生きるために、どういうふうな問題がその前途にあるかということを、簡単におはなしして参りたいと思います。

 御承知の通り、社会というものは、今のような形ではじまっておったのではありません。極く野蛮な時代が、ずいぶん永い間あったわけですが、そうした野蛮な時代から、人間は、幸福について、考えていたのであります。只それが幸福という言葉によって、はっきり考えられてはいなかったのです。どういうふうにして生きていたかというと、出来るだけ便利な、出来るだけよく生きたいという、言葉にならないような希望から、人間は沢山の発明をし、そうして、だんだん社会が発達して来たのであります。
 ギリシャ神話の中にプロメシュースの神話というのがあります。これは、火の起源の話ですが、プロメシュースという若者が人間の生活に火が必要だと考え、天上の神様の火を盗んでまいりました。人間が火を得たということは人間の社会の発達のために、大きな歴史であったわけですが、それを、ギリシャ神話では、プロメシュースが火を盗んで来たという具合に話しているわけです。
 このプロメシュースの話は、私たちにとって興味もあるし、昔から沢山の芸術の材料になっております。
 しかし、これは、伝説でありまして、実際は、木の枝が風にこすられて、火が出るのを人間が発見し、その火を葉っぱに移して、だんだん自分の生活の中にいれて、それまでは、生で食べていた物をだんだん焼いたり、煮たりして食べることを知ったのであります。
 人間がまず幸福を求めはじめたとき、自然と闘って、自分たちの生活を、より棲みよく工夫してきたということ。その次の段階には、生活の様式が変化するにしたがって、いままでの権力の存在が邪魔なものとなり、その権力との闘いがさけがたく起って来ている、ということがわかるのであります。
 また、ギリシャ神話の中にこういう話があります。「希望の箱」これはきっとみなさまも御存知だろうと思いますが、パンドーラという人間の女性が、ジュースの神につくられて、神の世界より巨人ヴァルカンの妻として人間の世界におくられます。その時ジュースは一つの箱をパンドーラに与えて言います。「お…

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