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幸福の建設
こうふくのけんせつ
作品ID3253
著者宮本 百合子
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十五巻」 新日本出版社
1980(昭和55)年5月20日
初出婦人民主クラブ主催講演会の速記原稿、1946(昭和21)年4月8日
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2003-09-14 / 2014-09-18
長さの目安約 31 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 今日のこの場所は割合にせもうございますけれども、この前の第一回の時においで下さいました方は、よくくらべればおわかりになるでしょうが、この場所は何かクラブの集まりの場所には気持がよいと思います。今に皆さんもっと大ぜいおいでになるとちょっと場所がせもうございますけれども、今日のようだとあまり話す人とお聴きになる方との距離がない、いわば同じ平べったいところで話すのがクラブの気持なのです。今日は月曜日ですし、お仕事のある方はいらっしゃりにくかったわけですけれども、いま櫛田さんがおっしゃいましたように、わざわざ遠いところまで出ていらっしゃって、いろいろなお話をお聴きになりましたり、自分達でお話になることもよろしゅうございますけれども、そのほかにお勤めになっているところやお住いになっているところで、お気持の合った方がお集まりになって、むずかしい問題もむずかしくない問題も、日常的な問題も、お魚をどうするかということから、お米の配給が遅れて困るがどうするかという話から始めて、いろいろな今の食糧問題の解決を試みている団体がございますから、それらの団体と結びついてそういうものの指導とか研究とかをあなた方もなさいまして、団体が実際的にお動きになってゆくようになさいませんと、ただ珍らしい人や何かを呼んできて話を聴いているだけでは、あなた方の御活動が昂まって参りませんから、そういうようにやってゆきたいと思います。
 きょう私のお話する題は「幸福の建設」ということなのですけれども、先程お話になった新居さんは昔からフェミニストなのです。いろいろ悪い時代にははっきりしたお話が申上げられませんから、ナンセンスのようなことをいっていらっしゃいましたけれども、今日などのお話は新居さんはお気持がよかったろうと思います。お年はあまり若くないけれども、お心のなかから若い女の人達に将来の希望をもってお話になったのは愉快だったろうと思います。あのお話のなかに、人間は雷さまみたいなものも自分達の幸福のために電車や電気アイロンにしてきたというお話がございましたが、そういう天然の力でさえも自分達は自分の幸福のために使うのですから、人間がこれまで生きて参りました歴史などは、もちろん私共の幸福のために使えるものでありますし、またいわば歴史そのものが人間がどういうように幸福に生きようかと努力して参りましたその足跡なのです。今日、民主主義とかいろいろなことが申されておりますけれども、私共は何しろお互い様にこの五ヵ月ほど前には、見ざる、言わざる、聞かざるででくの坊になって暮していたのです。ですから急に何でもいってよいということにもなり、また同時に自分達の責任をもって行動しろというようなことをいわれます。差当ってこの一票というものを私共はどういう風に使うかという問題さえ起ってきておりますが、急に寝ているところを起されたよ…

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