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今度の選挙と婦人
こんどのせんきょとふじん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十五巻」 新日本出版社
1980(昭和55)年5月20日
初出「アカハタ」1947(昭和22)年3月18、21日号
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2003-09-20 / 2014-09-18
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

          一

 一年目で、また総選挙がはじまります。去年の三月登場した婦人代議士三十九名の活動も、この一年間には私達の目に、ある程度までその現実を知らされました。これらの大勢の婦人代議士の中で、日本の民主化と人民生活の向上、そのことからもたらされる婦人の社会生活の改善のために、次回も当選してほしいと希望される人は何人あるでしょう。
 一年間の最も雄弁な教訓は、これ等の婦人代議士が女は女の生活をよく知っているということを、選挙演説の中心においてたたかい、婦人有権者も女は女へと思って、そこに希望をかけて投票したことが、まったく無意味であったということです。
 婦人代議士は、実際問題としてこの一年間に婦人のために何をしたでしょう。憲法改正は現吉田内閣の宿題の一つでした。吉田内閣がいくらかでも、民主的な要素の加わった憲法を制定して、自分達の政治の方向が民主的であるかのようにポーズすること、これは保守的な内閣にとってかくことのできない一つの仕事でした。憲法審議のための委員会に一人二人の婦人代議士が出席していたとしても、彼女達は具体的に人民憲法を作るように審議を進めることはしませんでした。改正憲法の中に奇妙な特殊性として天皇が存在しつづけていることを考えることはしませんでした。「政治は台所へ直通する」といって、あれほど演説した婦人代議士は今日の物価に対して、はたしてその一銭でも安くする力をもったでしょうか。日本の忍耐づよいいく百万の女性たちはこの点をよくよく思いかえしてみなければならないと思います。インフレーションの悪化は防ぎようもなくて、先日のラジオで石橋蔵相が何といったでしょう。彼は聖書の文句を引用しました。「幼な児の如くならざれば天国に入るを得ず。」国民は幼な児のごとく政府を信頼して、三月危機を突破してくれといいました。
 戦争中、国民の幸福のためにこの戦争はおこなわれているのである、必ず勝つ、日本は東洋の主となると政府がいったとき、日本の国民はそれを信じたと思います。幼な児の如く信じたと思います。大人のように世界の事情を考えて日本の実力と照らし合わせ、国民の犠牲を考え、一部の特権者の指導する帝国主義の侵略戦争はまちがっていると考えた者は、国賊として罰せられました。幼な児の如く信じた国民がその結果としておかれた今日の生活の破綻の中からめざめて、不合理な生産と、経済の事情を民主的に改善しようとしはじめたのは当然であります。日夜辛苦して家政をみている婦人が共にめざめたのも当然です。めざめた人民の命を削りながら日一日とひどくなるインフレーションに対し、はじめからインフレーション政策をとっている石橋が今ラジオで再び幼な児の如く政府を信じろというとき人民は目をみはります。今になって幼な児になって餓死して天国に入ることは欲しない人間の大人の分別を呼びさまされます。…

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