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メーデーと婦人の生活
メーデーとふじんのせいかつ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十五巻」 新日本出版社
1980(昭和55)年5月20日
初出「メーデーについて」NHKラジオ、1947(昭和22)年5月1日放送
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2003-09-20 / 2014-09-18
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 こんにちは、五月一日、メーデーです。世界のあらゆる国々の働く男女が、現在の要求と未来の希望とをかかげて、堂々と行進する日です。国によっていくらか時間のちがいはありますけれども、アメリカでもイギリスでもフランスでも、ソヴェト・ロシアでも、そして中国・朝鮮でも、五月一日というこの日には、工場から、経営から、農村から、すべての勤労者が溢れ出て、働くものの日として、行進いたします。もしテレビジョンが発達して、きょう、私たちの住んでいるところからも、労働者に溢れている世界の町々の光景をそっくりそのまま観ることが出来たら、それはどんなに壮観でしょう。旗はひるがえり、歌声は湧き、まるい地球は本当にきょうのメーデーにこそ、世界は働く人の花の輪でつながれるのです。
 皆さんのお宅には、必ず幾人か、つとめに出ている方があるでしょう。その方々は、けさふだんといくらかちがった仕度で家を出かけていらしただろうと思います。わたし水筒もって行くわ、と云って出かけた若い婦人の方もあったでしょうし、あああなた、こっちの靴下の方がうまくついであるわ、足にまめが出来ないように、ね、と、さっぱり洗いたての靴下をはかせてあげた奥さんもありましたろう。
 つとめのある方は、そうして行進に出かけ、さて、うちにのこった婦人たちは、この一年に一度のメーデーを、どうおすごしになるでしょうか。メーデーだと云っても、決して遅配のお米が配られては来ません。この二三ヵ月、また一段と高くなった物価も、せめてメーデーだけは、と割びきもありません。メーデーであるきょうも、行進とともにすすむ歌声をよそに家庭の婦人は、小さい子供たちの手をひき背中に赤ちゃんをおんぶして、汗ばむようになったのにさっぱりした袷もないと思いながら、闇市で晩のお惣菜をあさらなければなりません。メーデーは、外で働いている人たちだけのもの、家庭の心配から解放されることのない日本の家庭婦人にとって、メーデーは、ひとのことのように見えるかもしれません。
 でも、みなさま。ほんとに家庭の婦人にとって年毎のメーデーというものは、ひとのことなのでしょうか。ただ、よけい、靴下のつぎの仕事がふえるというだけのことなのでしょうか。

 世界で、はじめてメーデーを働くものの行進の日ときめて、それを実行しはじめたのはアメリカの労働者でした。一八八六年、日本でいえば明治十九年の五月一日に、アメリカ全国の労働組合員数百万人が、八時間の労働、八時間の休息、八時間の教育を! というスローガンをかかげて行進しました。そして、八時間労働の要求が通ったことに、世界の労働者が感奮しました。それ以来、一八九〇年、明治二十三年から、五月一日のメーデーは国際的な催しとなったのでした。
 明治二十三年と云えば、日本では、ついこの間まであった旧い憲法の発布された翌年です。みなさま御存じのとおり、日本…

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