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作品ID3274
著者宮本 百合子
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十五巻」 新日本出版社
1980(昭和55)年5月20日
初出民主日本建設婦人大会(日本共産党主催)へのメッセージ、1947(昭和22)年12月25日開催
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2003-09-20 / 2014-09-18
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 日本の政府がポツダム宣言を受諾して、平和と民主の新しい人民の社会を日本に建設することを世界に向って約束してから今日まで、まる二年とすこしたちました。
 この二年あまりの間に、私たちの生活におこった変化をかえりみますと、第一、憲法は改正され、昔のものよりは一応民主的なところの多いものになりました。新しい憲法のなかでは、男女の平等ということがいわれており、またすべての人民は働くことができる。すべての人民は教育をうけることができる。すべての人は、良心にしたがって行動する自由があるといわれております。
 民法も改正され、一家のうちで戸主や長男にばかり認められていた特権も縮少され、婦人の財産上の権利、親としての権利も認められるようになりました。結婚の自由もあるようになりました。離婚の問題も婦人に不利であった条件を、男子と同等なものにしようとされていますし、刑法の上で、特に婦人にだけきびしかった姦通罪が消滅しました。
 その中心にまだ天皇一族の特権をひろく認めているような憲法が、民主憲法といいきれないことは世界のひとしく認めて問題としている事実であり、最後的な承認はまだされておりません。しかし、過渡的にもせよ、こうして憲法が変ったことは、それにつれて民法、刑法の変更をもたらし、これまでの日本の婦人がおかれていた全く従属的な地位は高められました。このことは、私たちが公平にみとめてよいことだと思います。
 ところが、こうして憲法・民法・刑法などの改正によって、男子のひとしい権利と義務とを負う社会の成員となった日本の数千万の婦人が、現実にきょう生きている条件はどうでしょうか。
 これに対する答えは、実に簡単明瞭です。なるほど、字の上で、人民の生活は民主的らしく書かれるようにはなった。けれども、毎日の現実は、ちっとも民主的という方向で私たちが希望しているような安定をまして来ていない。もしきょうの私たちの生活を民主的というのならば、それは皮肉にも、インフレーションや政府の弱体から来るすべての苦痛を負わされるのはいまも人民が主であるという実際をいいあらわす民主であるとさえ感じます。
 この事実は、昨今新聞に発表されて、わたしたちをびっくりさせている都民税一つを例にとってもわかります。都民税というものは二三年前は一円から五六円どまりのものでした。ところが、今度発表された率によると、平均一戸五百円以上ぐらいに計算されています。その税を、どういう懐の中から捻出してゆかなければならないかといえば、千八百円ベースあるいは二千四百円ベースの家計の中からです。通勤・通学のための交通費のおそろしいはね上り、またこの夏から一段とひどくなった諸物価のはねあがり。婦人靴下一足千何百円という暮しのなかで、大やみ屋や利権屋以外のすべての勤労人民の苦しみは言語に絶してきました。
 なかでも苦しいのは婦人です…

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