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正義の花の環
せいぎのはなのわ
副題一九四八年のメーデー
せんきゅうひゃくよんじゅうはちねんのメーデー
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十五巻」 新日本出版社
1980(昭和55)年5月20日
初出「働く婦人」1948(昭和23)年5月号
入力者柴田卓治
校正者米田進
公開 / 更新2003-09-23 / 2014-09-18
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 三度めのメーデーが来る。ことしのメーデーはどんなメーデーになるだろう。お天気のよい日であることをのぞみたのしいメーデーの歌と行進とを期待する。去年は職場職場でなかなか趣向のこったプラカードや飾りものをもち出した。ブラス・バンドが先に立って行進した組合もあった。ことしのメーデーに自立合唱団や劇団はどんな自分たちの催しものを、全勤労者のメーデーの賑わいに交える計画だろう。日本でもメーデーには勤労階級が自分たちのなかから芽ばえはじめた歌や踊りを行進のよろこびに加える段階に進んで来た。
 今年もわたしたちは、去年うたった親しみのある明るい新メーデー歌をうたって何十万人の行進を行うのだが、三度めぐって来るメーデーについて、誰しもその胸の下にはいろいろな感想がある。
 一九四六年の第一回メーデーの、あの勤労階級の意義を示威するよろこびにさえみんながまだ馴れていなかったような内気なところのあるメーデー。それから、メーデーに勤労者は自分たちの意志と希望とを表現するものであるということを、その歌声の響のなかにもはっきり示した去年のメーデーの雰囲気。今年五月一日に、私たちみんなはどんなこころで、町から村から工場から、と歌うのだろう。
 真面目な、いくつもの思いがある。第一、おととしのメーデーのスローガンであり、去年のメーデーにも主要なスローガンの一つであった働けるだけ食べられるように、という切実な要求は、今年のメーデーに、どんな新しい表現をもってあらわされるのだろう。
 何故なら三年の間に最も重要なこの生活問題は解決されなかった。
 インフレーションはとめどがなくて、千八百円ベースは、現実の生活で規準にも何にもならなくなって来た。そこで、春さむい三月下旬のいま、新しく二千九百二十円の水準に向って、全勤労階級が種々な方法でその新給与の実現をもとめている。二千九百二十円で、二千四百カロリーはとれない。去年十二月下旬日本銀行の紙幣発行高は、凡そ二〇〇〇億円であった。この二千億という紙幣を百円札で八割、十円札二割とすると、面積六六万平方キロ。長さ八二万キロで地球のまわりの長さの二十倍。高さ富士山の百二十倍。この二千億を日本の総人口七千万と仮定すると一人が三千円ずつもっていられるはずである。ところが、実際にはどこへ金が吸いこまれてしまっているのだろう。正業にしたがっているものは、税、税の苦しみで、片山首相が「間借り」で都民税一二〇円ですましていられたことを羨んだ。
 こういう状態であってみれば、今日のメーデーに叫ばれる生活安定の要求は、この前二度の五月一日よりも痛切である。
 税と云えば、東芝のような大企業が、所得税の滞納のため財産の一部を公売にふされた。外聞がわるそうな公売で、東芝の生産した不合格品のストックや、会社として負担になっていたけれども潰してしまえなかった下請け工場の整理が…

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