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芥川竜之介氏を弔ふ
あくたがわりゅうのすけしをとむらう
作品ID33223
著者泉 鏡花
文字遣い旧字旧仮名
底本 「鏡花全集 第二十八巻」 岩波書店
1942(昭和17)年11月30日
入力者高柳典子
校正者門田裕志
公開 / 更新2003-09-12 / 2014-09-18
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より




 玲瓏、明透、その文、その質、名玉山海を照らせる君よ。溽暑蒸濁の夏を背きて、冷々然として獨り涼しく逝きたまひぬ。倏忽にして巨星天に在り。光を翰林に曳きて永久に消えず。然りとは雖も、生前手をとりて親しかりし時だに、その容を見るに飽かず、その聲を聞くをたらずとせし、われら、君なき今を奈何せむ。おもひ秋深く、露は涙の如し。月を見て、面影に代ゆべくは、誰かまた哀別離苦を言ふものぞ。高き靈よ、須臾の間も還れ、地に。君にあこがるゝもの、愛らしく賢き遺兒たちと、温優貞淑なる令夫人とのみにあらざるなり。
 辭つたなきを羞ぢつゝ、謹で微衷をのぶ。
昭和二年八月



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