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平塚・山川・山田三女史に答う
ひらつか・やまかわ・やまださんじょしにこたう
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「与謝野晶子評論集」 岩波書店 岩波文庫
1985(昭和60)年8月16日
初出「太陽」1918(大正7)年11月
入力者Nana ohbe
校正者門田裕志
公開 / 更新2002-06-10 / 2014-09-17
長さの目安約 25 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 女史の経済的独立と母性保護問題とについて、平塚雷鳥さんと私との間に端なくも意見の相異を見たのに対して、平塚さんからは、再び辛辣な反駁を寄せられ、山川菊栄さんと山田わか子さんのお二人からは、鄭重な批評を書いてくださいました。私は何よりも先ず三氏の御厚意に対して十分の感謝を捧げねばなりません。三氏のような豊富な学殖を持たず、三氏のような博詞宏弁を能くし得ない鈍根な私の書いたものが、偶[#挿絵]三氏のお目に触れたというだけでも、私に取ってはかなり嬉しいことであるのに、「唯だ看て過ぎよ」とせずに、わざわざ私のために啓蒙の筆を執って下すったということは真に想いがけない光栄であると感じます。
 平塚さんが日本における女流思想家の冠冕であることは、女史の言説や行動に服すると否とにかかわらず、社会が遍くこれを認めております。山川、山田二女史に到っては、その出処が平塚さんほどに華々しくなかったために、その卓抜な実力がまだ一般世人の注意を惹くだけの機会に達していないのを私は常に遺憾に思っているのです。教育の世界化に由って、女子の学士を出だし、更に女子の博士をも出そうとしている日本に、聡慧篤実な新進女子の次第に殖えて行くべきことは予見されますが、それらの女子の先駆として大きな炬火を執る一群の星の中に、特に鼎足の形を成しながら光芒の雄偉を競うものはこれらの三女史であると信じます。私は誇張でなく、真実を述べることの正しさにおいていいます。三女史の如きは女流小説家の翹楚である某々女史たちや、婦人理学士の第一着者である某々女史たちと共に、確かに我国婦人界の宝の人であると思います。否、むしろ現在の日本の状態では、生きた新しい国宝と称すべき女史たちであるとさえ思います。私の望むことは、社会がこれらの三女史に対する従来の冷淡な待遇を改めて、出来るだけ三女史のために、その能力を僻まず、枉げず、自由に発揮することの出来る機会を与え、社会もまた出来るだけ三女史の意見に聞いてそれを利用して欲しいと思うことです。三女史の自己主張のためには勿論、社会の幸福に資する人物経済の上からもこれを望まねばなりません。この意味から、たとい私の書いた物は粗末であっても、偶[#挿絵]三女史の識見を引出して社会の耳目を集める機縁を一つ殖したことについて自ら喜ぼうと思います。
 無名氏の手紙は、私が今、三女史の包囲攻撃の中に陥っていることを気附かずにいるかと言って注意されました。如何にも私は自分を論争の十字火の下に暴露して立っていることを認めます。私は論争を好まない者です。また論争に習わない者です。けれども必要のための論争は辞すべきものでないと思っています。三女史に対して捧げている前述のような尊敬は尊敬として、たとい三女史の博詞宏弁を以てしても私の意見の自信を覆えさない限り、私はその十字火を凌いで三女史の前にこの細小の自己…

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