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社会と人間の成長
しゃかいとにんげんのせいちょう
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十六巻」 新日本出版社
1980(昭和55)年6月20日
初出講演「ソヴェト文化の夕」の講演速記、1947(昭和22)年6月29日
入力者柴田卓治
校正者磐余彦
公開 / 更新2003-10-22 / 2014-09-18
長さの目安約 22 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 私は一九二七年から三〇年までソ連におりました。いまから考えれば大変古いことで、ちょうど第一次五ヵ年計画が始まったばかりのところです。ですから、皆様の方が新しい今日のソヴェトについては十分御存じのことでしょう。何を見ました、かにを見ました、というお話は申し上げません。私が深く動かされたこと、そして自分の一生に強く影響をうけたことは、どういうことであったか、ということを簡単にお話申し上げたいと思います。
 私たち人間というものは、いつも歴史の中に生きております。社会の中に生きております。宙に浮いた存在ではありません。社会はどんな条件でわれわれに影響して来るものでしょうか。わたしたちは、自分たちの運命をよりよくして行きたいとどこでも何時でも努力しております。自分の運命の主人となる可能性というものは、社会の現実のどんな処にあるか、自分の生きている社会の中で、どういう風に自分たちで作って行けるものか、そういう点について、ソヴェトの社会の歴史は、生きた姿で非常に深い教訓を与えていると思います。過去において与えるばかりでなく、今日においても深い教訓を与えるものと思います。そして明日のためにも……。
 最近、戦争が済んでから、ソヴェト領へ捕虜で行っている日本の人がどっさりあります。その方たちのある部分の方は帰って来ました。しかしある方たちはまだ帰って来ません。手紙は来るようになりました。赤十字の印のついた往復葉書で手紙が来るのです。このごろ私たちはまるで知らない人から、そういう葉書を貰いました。日本語で書いてあるわけですが、それを読むとこういうことが書いてある――どういう本を読んでいるということから、自分は思いがけないことからソヴェトの生活をするようになった、そしてここで、これからどの位暮すか知らぬが、自分の大変深く感じることは、日本人の利己心についてである、日本人は利己心が強い民族である、それは何と悲しむべきことで、同時に嫌なことであろうか、ということが往復葉書に書かれて来ました。こういうこころもちに何と答えたら正しい返事になるのでしょう。ソヴェトというと、共産主義者の国だとか、或は赤い国だとか、今日でもなおある種の人たちは、ソヴェト同盟の社会主義民主社会のもとの人民生活について現実的な理解をもとうとしないで、いろいろな妄想を歪んだ誇張でつたえております。このハガキの主はそういうような話をきいたこともあったでしょう。それが捕虜となって、ソヴェトの生活をしてみて、つい先頃まで、戦争の間は、世界で最も善良な、最も名誉ある立派な民族だと教えられていたその日本人が、ソヴェト人の生活ぶりとくらべてみて、日本人はどうして利己心が強いのだろう、と見も知らない私に嘆いて手紙をよこす、その気持はどういうことから変化をして来たのでしょう。それはやはり、その人が実際にその中で暮して見たソヴェ…

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