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若き僚友に
わかきりょうゆうに
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第十六巻」 新日本出版社
1980(昭和55)年6月20日
初出「学生評論」1951(昭和26)年3月号
入力者柴田卓治
校正者磐余彦
公開 / 更新2003-10-30 / 2014-09-18
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 三年前の五月、学生祭の日、この講堂は、甦った青春のエネルギーにみちあふれた数千の男女学生によって埋められました。
 三年のちのこんにち、ふたたびここは、数千の男女学生によってみたされています。きょうここに参集した、われらの若き僚友たちは、この三年の間、自身の生活とたたかい、日本の学問の自立のために、日本の人民の理性の擁護のために思索し、行動して、少からぬ経験によって成長した人々です。

 敗戦以来こんにちまで、日本の学生が、純真な力を傾けて発言し、行動して来たどの一つをとってみても、それはポツダム宣言と日本の憲法が、いつわりのものでないことの証明を求める熱意のあらわれでした。大学法案に反対して、日本の学問と大学の自主をまもりとおした学生の意欲。日本の愚民教育に反対する世論を、全日本的な発言として組織した情熱。そしていま、日本から理性の存在そのものをつみ取ろうとするレッド・パージに対する反対。一つとして、われわれすべて、良心と理性あるものの要求でないものはなかった。それだからこそ学生の運動の列伍の周囲には、常に労働者階級をはじめ、あらゆる人々のもっている日本の善意が篝火となって結集して行かずにいかなかったのであると信じます。

 支配階級は、すでにこんにち、人民の理性の声にたえ得なくなって来ています。さもないならば、どうして、日本の社会生活のあらゆる場面から、こんな大規模な理性の狩りたてを行う必要があるでしょう。レッド・パージとそれに反対する学生の大量な処分は、全く中世的な方法であり、みせしめのためのはりつけ同然です。この演出では、観衆の錯覚がたくみに利用されている。すなわち、警官隊の野蛮な襲撃や、検挙された学生が数百名にのぼることを、さも日本の学生が兇暴なものになってしまいでもしたように世界を偽瞞するための宣伝に使用しています。

 われわれを、こんにち、心からいきどおらせているのは、権力機関のすべてを動員して行われているこの「作られた真実」の偽瞞性です。若いエネルギーの鬱積があふれて、彼らの教室からはみだしたとき、大衆的な行動のなかには、「喧嘩両成敗」というべき事態のおこることもあるでしょう。行きすぎとか誤解とか、ことのはずみ、というものは社会生活のどこにもありがちなことです。若い世代に対する糺弾者であり、われわれ自身の老いることを欲しない良心の蹂躙者である権力に向って、わたしは心から次の質問をします。学問の自由、良心の自由、理性の自由をまもろうという動機に立つ学生の運動を、ノン・ポリティカルであるべしと宣伝する人々自体が、なぜ、現実の学生の動きに対しては、このようにも極度に政治的であるのか、と。こんにち、学生運動に集中されている攻撃の性質は、ことしの四月六日、菅季治氏を死なせた衆議院の特別調査委員会をホーフツさせます。

「要請」という一つの文字の解釈…

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