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イデオロギーの論理学
イデオロギーのろんりがく
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「戸坂潤全集 第二巻」 勁草書房
1966(昭和41)年2月15日
初出「性格」概念の理論的使命「新興科学の旗のもとに 一巻二号」1928(昭和3)年10月<br>「問題」に関する理論「哲学研究 一五七号」1929(昭和4)年2月<br>論理の政治的性格「思想 九〇号」1929(昭和4)年8月<br>科学の歴史的社会的制約「東洋学芸雑誌 四六巻一号」1929(昭和4)年12月<br>科学の大衆性「思想 九六号」1930(昭和5)年
入力者矢野正人
校正者トレンドイースト
公開 / 更新2010-05-03 / 2016-10-07
長さの目安約 234 ページ(500字/頁で計算)
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本文より





 この書物は、過去一年余りの間に私が様々な雑誌に発表した文章を、略々発表の時期の順序に従って編集したものである。どの文章もそれだけで独立な統一を有っているのではあるが、書物全体が実は、初めから一定のテーマを追跡することによって、それからそれへと次々に展開された諸問題の一系列を形づくっている。それ故この書物を初めから順次に読むならば、個々の文章だけでは気付かれなかったような必然的な統一が、容易に読み取れるだろうと思う。そこにこの書物を出版する理由がある。
 ここに取り扱われたものは主に論理に就いての問題であると云うことが出来る。ただその論理という言葉が、所謂形式論理学でいう夫とは別であるということは、この書物の名前自身が物語っている通りである。人々は今まで観念の、思惟の、認識の、科学の、論理学の周囲に集っていたように思われる。そして思惟の論理学に就いては、之を論理学以外のものの責任に帰して好いように考えていたのではないかと思われる。併し今吾々にとって必要なのは、思想の論理学なのであり、それが「イデオロギー」の論理学なのである。
 イデオロギーという言葉を観念形態という意味に用い始めたのはカール・マルクスの独創に由来するといわれている。従って今云うイデオロギーという言葉はただマルクス主義の理論に立ってのみ、初めて正当な問題となることが出来る。「イデオロギーの論理学」はマルクス主義にのみぞくする。
 だが之は社会科学的公式の適用ではない、そのことはこれ等の文章に少し眼を通せば明らかである。そうではなくして却って社会科学的公式の論理学的展開でなければならない。之は新しい論理公式を導来することを目的とする。夫々の文章がそれ故、論理上の問題を解くための公式として利用されるであろうことを、私はひそかに望んでいる。例えば世界観の論争に就いての問題は「問題に関する理論」へ、真理乃至虚偽に関する問題は「論理の政治的性格」乃至「無意識的虚偽」へ、科学階級性の問題は「科学の歴史的社会的制約」及び「科学の大衆性」へ、夫々帰着することが出来るであろう。敢えて譬えるならば、それは一切の民族問題がマルクスの「ユダヤ人問題」の公式に帰着するようなものであるだろう。最初の文章「性格概念の理論的使命」は、之等の公式を導き出すための下準備に外ならない。
 初めの方の文章では問題が比較的に無限定な形を取っている、後の方の文章が之を限定するのである。であるから、この書物はまだ之だけの内容では結末を有つのではない。次々に展開する筈の多くの問題が残されているわけである。好意ある読者がこの点に就いて私を誘導して呉れるならば、著者としてそれ以上の報いを私は知らない。私は何を追跡し何を整理すべきであるか。
 最後に一言しておきたい。私はかつて旧著『科学方法論』に於て、社会科学に関する科学論を後の機会に…

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