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「いき」の構造
「いき」のこうぞう
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「「いき」の構造」 岩波文庫、岩波書店
1979(昭和54)年9月17日
入力者鈴木厚司
校正者かとうかおり、鈴木厚司
公開 / 更新2000-05-29 / 2014-09-17
長さの目安約 102 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

[#横組みで、ページの上部、左右中央に]
La pens[#挿絵]e doit remplir toute l'existence.
MAINE DE BIRAN, Journal intime.


[#改ページ、ページの左右中央に]



     序

 この書は雑誌『思想』第九十二号および第九十三号(昭和五年一月号および二月号)所載の論文に修補を加えたものである。
 生きた哲学は現実を理解し得るものでなくてはならぬ。我々は「いき」という現象のあることを知っている。しからばこの現象はいかなる構造をもっているか。「いき」とは畢竟わが民族に独自な「生き」かたの一つではあるまいか。現実をありのままに把握することが、また、味得さるべき体験を論理的に言表することが、この書の追う課題である。

  昭和五年十月
著者



[#改ページ、ページの左右中央に]



       目  次

     一 序  説
     二 「いき」の内包的構造
     三 「いき」の外延的構造
     四 「いき」の自然的表現
     五 「いき」の芸術的表現
     六 結  論



[#改丁]




     一 序  説

 「いき」という現象はいかなる構造をもっているか。まず我々は、いかなる方法によって「いき」の構造を闡明し、「いき」の存在を把握することができるであろうか。「いき」が一の意味を構成していることはいうまでもない。また「いき」が言語として成立していることも事実である。しからば「いき」という語は各国語のうちに見出されるという普遍性を備えたものであろうか。我々はまずそれを調べてみなければならない。そうして、もし「いき」という語がわが国語にのみ存するものであるとしたならば、「いき」は特殊の民族性をもった意味であることになる。しからば特殊な民族性をもった意味、すなわち特殊の文化存在はいかなる方法論的態度をもって取扱わるべきものであろうか。「いき」の構造を明らかにする前に我々はこれらの先決問題に答えなければならぬ。
 まず一般に言語というものは民族といかなる関係を有するものか。言語の内容たる意味と民族存在とはいかなる関係に立つか。意味の妥当問題は意味の存在問題を無用になし得るものではない。否、往々、存在問題の方が原本的である。我々はまず与えられた具体から出発しなければならない。我々に直接に与えられているものは「我々」である。また我々の綜合と考えられる「民族」である。そうして民族の存在様態は、その民族にとって核心的のものである場合に、一定の「意味」として現われてくる。また、その一定の意味は「言語」によって通路を開く。それ故に一の意味または言語は、一民族の過去および現在の存在様態の自己表明、歴史を有する特殊の文化の自己開示にほかならない。したがって、意味およ…

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