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男女関係について
だんじょかんけいについて
副題女房に与えて彼女に対する一情婦の心情を語る文
にょうぼうにあたえてかのじょにたいするいちじょうふのしんじょうをかたるぶん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「日本の名随筆47 惑」 作品社
1986(昭和61)年9月25日
入力者渡邉つよし
校正者門田裕志
公開 / 更新2002-11-23 / 2014-09-17
長さの目安約 28 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

         一

 野枝さん。
『女の世界』編集長安成二郎君から、保子に対する僕の心持を書いてくれないか、という注文があったので、ちょうど今このことについて君と僕との間に話の最中でもあり、それに君に話しかけるのが僕には一番自由でもあるので、君に宛ててこの手紙を書くことにする。世間の奴等には、堪らないおのろけとも聞えることを書くようになるかも知れないが、堪ろうと堪るまいと、それは僕等の知ったことじゃない。
 野枝さん。
 君も、ずいぶんわからずやの、意地っ張りであったね。二月のいつであったか、(僕には忘れもしない何月何日というようなことは滅多にない)三年越しの交際の間に初めて自由な二人きりになって、ふとした出来心めいた、不良少年少女めいた妙なことが日比谷であった以来「なおよく考えてごらんなさい」と言って別れて以来、それからその数日後に偶然神近と三人で会って、僕のいわゆる三条件たる「お互いに経済上独立すること、同棲しないで別居の生活を送ること、お互いの自由(性的のすらも)を尊重すること」の説明があって以来、君はまったく僕を離れてしまった形になった。
 君には、この「性的のすらも」ということが、どうしても承知できなかったのだ。僕には保子という歴とした女房があることも知ってい、神近という第一情婦(『万朝報』記者からの名誉ある命名)のあることも知ってい、そしてまた自分にも辻という立派な亭主のあることも忘れていた訳でなく。(三行削除)
 もっとも、過って改むるに憚ることなかれ、とも言う。もし君が、世間での評判のように、きわめて動揺しやすい、いわゆる出来心的の女であったのであらば、すなわち僕とのあのこともほんの一時の浮気であったのであらば、過って改むるに何の憚るところがあろう。(二行削除)
「私は大杉さんが大好きであった。しかし決して惚れていた訳ではない。」惚れていた、などという言葉は使わなかったろうが、とにかくこんな意味のことを、君はよく人に話したそうだ。話は横道へそれるが、ヴォルテールの哲学事典の「姦通」の項を開いて見ると、これとちょっと似た面白いことが書いてある。
「善良な夫婦者は、今ではもう、そんな卑しい言葉は使わない。姦通などと言う言葉は、決して口にすらも出さない。女が、その友人達に自分の姦通のことを話す時には、J'avoue que J'ai du go[#挿絵]t pour lui(私ね、本当は、あの方が好きなの)と言う。もっとも、昔は、尊敬している、とも言ったものだ。ところが、ある金持ちの女房が、ある役人に多少の尊敬を持っていることを、坊さんに懺悔した。するとその坊さんが、Madame, combien de fois vous a-t-il estim[#挿絵]e ?(奥さん、その人は、幾度あなたを尊敬しましたか)と問い返したので、それ以来身分のあ…

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