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昭和二年の二科会と美術院
しょうわにねんのにかかいとびじゅついん
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「寺田寅彦全集 第四巻」 岩波書店
1961(昭和36)年1月7日
初出「霊山美術」1927(昭和2)年11月
入力者Cyobirin
校正者浅原庸子
公開 / 更新2005-10-14 / 2014-09-18
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

   二科会(カタログ順)

 有島生馬氏。 この人の色彩が私にはあまり愉快でない。いつも色と色とがけんかをしているようで不安を感じさせられる。ことしの絵も同様である。生得の柔和な人が故意に強がっているようなわざとらしさを感じる。それかと言ってルノアルふうの風景小品にもルノアルの甘みは出ていない。無気味さがある。少し色けを殺すとこの人の美しい素質が輝いて来ると思う。
 ビッシエール。 この人の絵には落ち着いた渋みの奥にエロティックに近い甘さがある。ことしのは少し錆が勝っている。近ごろだいぶこの人のまねをする人があるが、外形であの味のまねはできない。できてもつまらない。
 石井柏亭。 「牡丹」の絵は前景がちょっと日本画の屏風絵のようであり遠景がいつもの石井さんの風景のような気がして、少しチグハグな変な気がする。「衛戍病院」はさし絵の味が勝っている。こういう画題をさし絵でなくするのはむつかしいものであろうとは思うがなんとかそこに機微なある物が一つあるであろうとは思う。「クローデル」はよくその人が出ているところがある。私はこの画家が時々もっと気まぐれを出していろいろな「試み」をやってくれる事を常に望んでいる。
 小出楢重。 この人の色は強烈でありながらちゃんとつりあいが取れていて自分のような弱虫でも圧迫を感じない。「裸女結髪」の女の躯体には古瓢のおもしろみがある。近ごろガラス絵を研究されるそうだがことしの絵にはどこかガラス絵の味が出ている。大きな裸体も美しい。
 熊谷守一。 この人の小品はいつも見る人になぞをかけて困らせて喜んでいるような気がする。人を親しませないところがある。しかしある美しさはある。
 黒田重太郎。 「湖畔の朝」でもその他でもなんだか騒がしくて落ち着きがなくて愉快でない。ロート張りの裸体の群れでも気のきいたところも鋭さもなくただ雑然として物足りない。もう少し落ち着いてほしい。
 正宗得三郎。 この人の絵も私にはいつもなんとなく騒がしくわずらわしい感じがあって楽しめない。もう少し物事を簡潔につかんで作者が何を表現しようとしているかをわかりやすくしてほしいと思う。その人の「世界」を創造してほしい。
 鍋井克之。 この人の絵はわりに好きなほうであったが、近年少しわざとらしい強がりを見せられて困っている。ことしのにはまたこの人の持ち味の自然さが復活しかけて来たようである。しかしあの大きいほうの風景のどす黒い色彩はこの人の固有のものでないと思う。小さな家のある風景がよい。
 中川紀元。 いつも、もっとずっと縮めたらいいと思われる絵を、どうしてああ大きく引き延ばさなければならないかが私にはわからない。誇張の気分を少し減らすとおもしろいところもないではないが。
 坂本繁次郎。 おもしろいと言えばおもしろいがそれは白日の夢のおもしろさで絵画としてのおもしろみであ…

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