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異質触媒作用
いしつしょうくばいさよう
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「寺田寅彦全集 第三巻」 岩波書店
1997(平成9)年2月5日
初出「文芸」1933(昭和8)年12月
入力者Nana ohbe
校正者noriko saito
公開 / 更新2004-09-14 / 2014-09-18
長さの目安約 13 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

      一 帝展

 帝展の洋画部を見ているうちに、これだけの絵に使われている絵具の全体の重量は大変なものであろうと考えた。その中に含まれている Pb[#「Pb」は縦中横]と Zn[#「Zn」は縦中横]だけでも夥しいものであろうと思われた。こんな事を考えるほどに近頃はこうした展覧会の絵に興味を失ってしまったのである。批評などする気にはなれそうもない。
 日本画と西洋画の区別が年と共にいよいよ分からなくなって来た。画の主題でも描法でも両方から互いに接近し模倣し入乱れて来ている。それだのにそうかと云って、洋画家で絵絹へ油絵具を塗る試みをあえてする人、日本画家でカンバスへ日本絵具を盛り上げる実験をする人がないのはむしろ不思議なくらいである。
 洋画を通じてルソーやマチスや、ドランやマルケーなどのようなフランス絵の影響がこっそり日本画の方へ入り込んでいるのを発見する。日本の芸術がフランスを一と廻わりして後にもう一遍日本へ帰って来たのである。
 洋画でも日本画でも人物の顔をなるべくスチューピッドに描く事が近年の流行のようである。悪趣味であると思う。これが東京音頭の流行となんらかの関係があるかどうかは不明であるが多少の関係があるかもしれない。
 洋画の方に「測候所」があると、日本画の方にも「測候所」及び「海洋気象台」がある。ガードやガソリンスタンドなども両方にある。それだのに、洋画の方には鎧武者や平安朝風景がない。これも不思議である。
 帝展には少ないが二科会などには「胃病患者の夢」を模様化したようなヒアガル系統の絵がある。あれはむしろ日本画にした方が面白そうに思われるのに、まだそういう日本画を見ない。これも意外である。
 デパートのマークを付けたために問題になった絵が、洋画部でなかったことも偶然なようで自然である。あれはともかくも弁護の余地のない全く広告びら向きの絵のように思われた。広告びらの版画でも絵がよければ芸術であり、アメリカ人が高い金を出して買うのであるが。
 彫刻部の列品は、もしか貰ったらさぞや困ることだろうと思うものが大部分であるが、工芸品の部には、もし沢山に金があったら買いたいと思うものが少しはある。
 来年あたりから試しに帝展の各室に投票函を置き、「いけない」と思う絵を観客に自由に遠慮なく投票をさせて、オストラキズムの真似をしたらどうかと思う。推賞する方の投票だと「運動」が横行して結果は無意味に終るにきまっているが、排斥する方の投票だと、その結果は存外多少の参考になるかもしれない。そうして最後に残った絵だけをもう一遍陳列してみたらどんなことになるか。これは試しに一度やってみる価値があるかもしれない。

      二 ヨーヨーとコリントゲーム

 ヨーヨーがすたれて、コリントゲームがいまだに残存している。
 ヨーヨーは力学的の玩具である。これの運動…

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