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泣菫詩抄
きゅうきんししょう
著者
文字遣い旧字旧仮名
底本 「泣菫詩抄」 岩波文庫、岩波書店
1928(昭和3)年5月5日
入力者門田裕志
校正者Y.S.
公開 / 更新2013-08-03 / 2014-09-16
長さの目安約 74 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

自序


 書肆岩波氏の需めにより、岩波文庫の一篇として、ここに私の作詩撰集を出すことになつた。
 選をするにあたり、私はただ自分の好みにのみしたがつて取捨をきめた。紙數が限られてゐるので、暮笛集では尼が紅、二十五絃では雷神の夢、天馳使、十字街頭では葛城の神などの長篇を收容することができなかつたのを遺憾に思ふ。
  昭和三年三月

薄田淳介
[#改丁]
[#ページの左右中央]


「こもり唄」より(明治四十一年)



[#改丁]

冬の鳥

雪の降る日に柊の
あかい木の實がたべたさに、
柊の葉ではじかれて、
ひよんな顏する冬の鳥、
泣くにや泣かれず、笑ふにも、
ええなんとせう、冬の鳥。


つばくら

紺の法被に白ぱつち、
いきな姿のつばくらさん、
お前が來ると雨が降り、
雨が降る日に見たらしい
むかしの夢を思ひ出す。


ほほじろ

み山頬白鳴くことに、
一筆啓上つかまつる、
故郷を出てからまる二年、
まめで其方も居やるかと、
つひぞ忘れた事もない、
風のたよりにことづてて、
木の實草の實やりたいが、
お山の鳥の世わたりは、
春の彼岸が來てからは、
雛のそだてに忙しうて、
ひまな日とては御座らない。


猿の喰逃げ

お山の猿はおどけもの、
今日も今日とて店へ來て、
胡桃を五つ食べた上、
背廣の服の隱しから、
銀貨を一つ取り出して、
釣錢はいらぬと、上町の
旦那のまねをしてゐたが、
銀貨は贋の人だまし、
お釣錢のあらう筈がない、
おふざけでないと言つたれば、
帽子を脱いで、二度三度
お詫び申すといふうちに、
背廣の服のやぶれから
尻尾を出して逃げちやつた。


三羽雀

わたしの裏の梅の木に、
雀が三羽止まつて、
一羽の雀のいふことに、
「うちの子供のいたづらな、
わたしの留守をよいことに、
卵は盜む、巣はこはす、
なんぼ鳥でも生の子の
いとし可愛はあるものを。」

なかの一羽のいふことに、
「うちの子供のもの好きな、
わたしが山へ行つた間に、
つひこつそりと巣の中へ、
雲雀の卵をしのばせて、
知らぬ繼子を孵へさせた。」

あとの一羽のいふことに、
「うちの子供のしんせつな、
わたしの子らが巣立して、
つひ路邊へ落ちたとき、
まるいお手手にとりあげて、
枝にかへして呉れました。」




向う小山の雉の子は、
何になるとてほろろうつ、
鷲になるとてほろろうつ。
鷲になるまい、鷹になろ、
鷹になるまい、雉になろ。

雉は山鳥、山の木へ、
人に知られぬ巣をかけて、
やんがて雛をあやすとて、
ほろろほろろと唄ひます。




きのふは桃の花が咲き、
けふは燕が巣にかへる。
雛の節句が來てからは、
いそがしぶりの増すばかり、
せめて一日寢てゐたい。


こさめ

今日も小雨が
降るさうな。
お寺の庭の
菩提樹に、
蛇の目の傘に、
つばくろに、
わたしが結うた…

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